わたしはずっと隣接士業である税理士や公認会計士、弁護士の先生方が「AIで劇的に業務が楽になった!」とSNSで発信されるのを見ながら、自分の業務ではなかなかその恩恵を実感できず、もどかしい思いを抱えていました。
ChatGPTやClaude等のAIツールは試してはいたものの、簡単な質問をする程度。本格的な業務改善には至っていませんでした。そんな中、Twitterで目にした一つのツイートが、すべてのきっかけとなりました。
全ての発端となったツイート
このツイートを見て、「自分でも何か作ってみよう」と思い立ちます。
さて、フォームを作ろうと思ったけれど、何から着手すればいいのか分かりません。
そういえば、このツイートにどなたかが引用で分かりやすい作り方を書いてくださっていた気がするな、と思い改めて探してみたところ、該当のツイートの引用で、士業のAI活用では著名なたけちゃんまん先生のツイートを見つけました。
フォームを作るにあたり、これまでのように一から手入力で作るのも手間だと感じ、たけちゃんまん先生の動画に従って、AIに要望を伝えてみることにします。
するとChatGPTが、見たこともないようなコードを出力してきました。
Google Apps Script(GAS)のコードらしいのですが、「これをどうすればいいのか」と戸惑いました。しかし、ググってみてもよく分からない。
そこで「AIのことはAIに聞けばいい」という言葉を思い出し、ChatGPTに使い方を質問したところ、非常に分かりやすく教えてくれました。(難しいと感じた部分は「高校生でもわかるように教えて」と繰り返し質問しました)。
GASやコードという言葉に抵抗感がある方は、とりあえずこのツイートだけみてその通り操作してみてください。GASとゆう言葉に拒絶反応を起こしている方からもいくばくかの共感をいただきました。
ChatGPTが出してきたフォームを該当箇所に、コピー&ペーストを繰り返すことで、次第にそれらしいフォームを作ることができました。
ある程度の型ができあがり、自分でフォームをいじる段階になった段階で、「動画を埋め込めるのではないか」ということに気付きました。そこで、当時話題になっていたNotebookLMのスタジオ機能で自分で書き起こしていたブログ記事をソースとして動画や音声解説を作成しました。
それをYouTubeにアップロードすることに心理的抵抗が生まれることもあるのかもしれませんが、わたしの場合には、幸いにも、友人の手伝いでYouTubeのアップロード作業をしていた経験があり、抵抗なくフォームに動画を組み込むことができました。
結果として、そのアイデアを尊敬するたけちゃんまん先生からお褒めの言葉をいただきとても嬉しかったです。
動画を組み込むにあたっては、NotebookLMで作成した動画をそのまま組み込むこともあれば、出力された音声解説をデータとして組み込むこともありました。YouTubeをUPするにあたって必要となるサムネイルについても、NotebookLMのインフォグラフィック機能で、サクッと作成することができ、大変助かりました。
全て動画解説にしたほうが良いのではないか?というアドバイスもいただきましたが、上記のツイートの理由で、一部は音声解説を採用しました。
特別な技術などを用いたわけではなく、誰でもできる操作を繰り返したのみではあったのですが、一連の流れの中で多くのご反響をいただきました。そこで、このような取り組みには一定程度ニーズがあるのではないかと感じ、わたしはAIを触り始めることになります。
以下では、これまで開発してきたフォームやアプリを、その開発背景とともにまとめています。専門家の視点から見れば取るに足らないものばかりかもしれませんが、プログラミング未経験の司法書士でも、数時間でこれくらいのものは開発できる時代になっているということを、実例としてお伝えできればと思います。
合同会社設立ヒアリングフォーム
開発背景
このフォームは、前述のとおりのツイートから着想を得て開発したフォームになります。
本来であれば株式会社のフォームから作るのが一般的かもしれません。しかし、私には明確な理由がありました。
「社員の相続に関する規定」のヒアリングに、非常に苦労していたからです。
この論点は「依頼者にとって理解しづらい」「口頭での説明では伝わりにくい」しかし、定款作成において極めて重要なものです。
選択式で回答いただけて、動画での解説でフォローアップできる仕組みがあれば、依頼者の理解も深まり、ヒアリング漏れも防げる。そう考え、まずは合同会社設立フォームの作成に着手しました。
初めてGASを使って作成したフォームでしたが、多くの反響をいただき、皆様も「社員の相続に関する規定」のヒアリングにご苦労されていたのだと実感しました。
協力者との連携
一人の知恵でできることには限界があります。せっかくなら多くの方に使っていただける良いものにしたい、また他士業の方からの意見も取り入れたいと考え、親しくさせていただいている先生方にお声がけしたところ、快くご協力いただきました。改めまして、ご協力いただいた先生方に心より感謝申し上げます。
得られた効果
ヒアリング漏れがほぼなくなり、書類作成前の不安が大きく減りました。初めてGoogleフォームで業務用ツールを作成しましたが、自分の業務の流れの中にAIを取り込む余地があると感じるキッカケとなりました。
また、このツールを公開したことで、「こういう視点で業務を見ている司法書士」として自分を外に出すきっかけにもなりました。
株式会社設立ヒアリングフォーム
開発背景
合同会社フォームを作った後、同様のものを株式会社でも作れないかと考えました。しかし、株式会社は合同会社以上に論点が多く、作成には苦労しました。
前回以上に多くの先生方の協力を得て、フォーム作成にとりかかりました。しかし、先生方から集まった論点を全て盛り込もうとすると、あまりにもフォームが長大となりすぎて、途中で離脱が発生してしまうのではないか、という懸念が生じました。
そこで最終的には、最小限必要な範囲の情報をフォームには入力いただき、フォーム作成の中で生じた各論点については、別途、後日行うMTG上で聞き取りを行うという建て付けにすることで着地しました。
協力者との連携
合同会社のフォーム作成時と同様に、いや、それ以上に多くの先生方から貴重なご意見をいただきました。改めて、先生方がクライアントのためにいかに工夫をして業務を行っていらっしゃるのかを感じました。重ね重ねではありますが、快くご協力いただいた先生方に心より感謝申し上げます。
使い方・仕組み
合同会社フォームの設計思想をベースに、必要最小限の範囲内で株式会社特有の論点を分解し、後工程での判断がしやすい形で情報が整理されるよう設計しています。
得られた効果
ヒアリング時間の短縮だけでなく、説明や確認の質が安定しました。また、フォーム入力確認画面からそのままオンラインMTGのURLを発行する流れを作れたことで、別途、個別のMTGの日程調整を行う必要がなくなりました。
ちなみに、ヒアリング事項を盛り込みすぎてあえなくボツとなった作品はこちら。
公告期間計算アプリ
開発背景
公告期間の計算は、法律上のルールに則ったシンプルなものですが、ミスが許されず、毎回神経を使う作業です。特にわたしのような1人士業では、自分で計算した期間に確信が持てず、また、ダブルチェックをしてもらうこともできないため、登記が完了するまで神経をすり減らすという事態が生じていました。
そこで、一定のルールを覚え込ませることで、そのルールに基づき、機械的に公告期間を計算できるアプリを作ろうと思いました。
使い方・仕組み
「公告の種類」「公告方式」及び「公告掲載日」を入力すると、期間満了日と効力発生日(登記申請可能となる日付)を自動で算出するシンプルなツールです。
得られた効果
ツールで算出したものを改めて自分で確認する、というダブルチェックが可能になり、心理的負担が減少しました。また、計算結果のPDF出力機能もつけているため、出力結果をクライアントと共有することにより、クライアントにもタイムスケジュールを把握してもらいやすくなりました。
レターパック通知システム
開発背景
レターパック管理は地味ですが、その都度、控えのシールに概要を書いてわかりやすいところに貼って、到達したかどうかを確認してヤキモキするという事態が恒常化していました。また、わたしたちの業界では、返送用のレターパックも同封しているのですが、管理番号を控えても都度その番号を検索して、返送状況を確認するわけにはいかず、どのタイミングでクライアントが返送書類を投函したかを確認できないという課題もありました。
使い方・仕組み
スプレッドシートを使い、レターパックの進捗を可視化する仕組みを構築しています。また、「行きのレターパックについては、先方に届いた時」に、「戻りのレターパックについては、郵便局に引き受けられた時」に、あらかじめ設定しておいたGoogleChatの部屋に通知がくる設定になっています。
得られた効果
管理業務に対する心理的な引っかかりが減り、「ちゃんと把握できている」という安心感が残るようになりました。特に、返送用レターパックについては、郵便局での引受時に通知がくるようになり、受取り時期の予測及びそれに伴う登記申請や納品処理のスケジューリングが容易になりました。
ちなみに、わたしがこんなものを作るだいぶ前に、既にこんな素敵なものを作っている方がいらしゃったようで、よりシンプルなものをご希望の方は、よろしければこちらをご利用ください。他の先生からのご連絡で知ったのですが、郵便局の追跡URLのリンクなどもついており、わたしのものよりはるかに完成度が高く、説明にもスクショがふんだんに使用されており使いやすいです。
1つだけわたしのほうのセールスポイント?をあげるとすると、Webhook URLの設定さえすれば、わたしのスプレッドシートでは該当のタイミングで通知が来るようにできる、というあたりでしょうか。
Webhook URLの詳細については、わたしのスプレッドシートの別シートにも説明はいれさせていただいております。
役員任期計算ツール
開発背景
役員任期はその存在自体は知っていても、税理士や司法書士のどちらが管理すべきなのか?それともクライアントが自社で管理すべきものなのか?といったことが実務上不明確であり、スポットとして抜けがちなことに問題意識をもっていました。
そこで、誰でも現在の任期の状態を確認できるものを作れば、任期切れというアクシデントを避けられるのではないか?と思い、このアプリを作ることにしました。
使い方・仕組み
役員の選任日(「就任日」として登記された日付)を入力するだけで、任期を自動計算できるシンプルなツールです。
取締役及び監査役の法律上の原則の任期である「2年」「4年」だけでなく非公開会社ではありがちな最長「10年」の任期にも対応しています。
また、当初は司法書士の先生方向けのものなのか、税理士の先生方向けのものなのか曖昧なツールだったのですが、税理士の先生方向けのアプリとして組み立て直すことにしました。具体的には、任期切れとなっていた場合、連携先の司法書士にご提供頂きたい資料をアラートの中に入れ込むことで、「重任登記するにあたって何が必要なんでしたっけ?」という司法書士と税理士の間のラリーを1つ削ることを目指しました。
得られた効果
主に、税理士の先生方から、任期の管理コストが減ったという喜びの声をたくさんいただきました。また、同職のみなさまからもリアクションをいただき、みなさまも任期管理については頭を悩まされていらっしゃったんだなと感じました。
最後のオマケで、ミニミニアプリである「増資の登録免許税自動計算ツール」もここに置いておきます。
なぜツールを作り続けるのか
私がツールを作る理由は、「楽をしたいから」ではありません。判断や説明、対話といった、司法書士が本来向き合うべき仕事に、きちんと時間と集中力を残したいからです。
AIや自動化は、仕事を奪うものではなく、余計な摩擦を取り除くための道具だと考えています。摩擦が減ることで、判断の質や対話の密度はむしろ上がると感じています。
様々なAIに関する情報やツールは溢れていますが、こと士業の実務で使えるものは限られていますし、市場規模から考えて、士業の実務に最適にフィットする形のものを提供してもらうのは難しいと考えています。そのような状況下で、実務を知る士業がAIでツールやアプリを開発できるということには、一定の意味があると思います。
とはいえ、たけちゃんまん先生がおっしゃるように、AIを使うこと自体を目的とするのではなく、AIを使って業務を効率化することが重要です。私は新たなアプローチとして、AIを活用した業務効率化の研究を続けていきたいと思います。
まとめ
この記事で紹介したアプリやツールは、すべて素人のちょっとした思いつきから始まっています。完成形ではありませんし、今後も変わり続けると思います。このまとめ自体も、試行錯誤のログの一部です。
これから先も、司法書士としての実務の研鑽に励むとともに、自分にできる範囲内でAIの利活用の研究をしていければと思っております。
こんな変なやつと話してみたい!という方や、こんなのがあると便利だと思うよ!ってご意見がある方は、下記からお気軽にご連絡いただけますと幸いです。
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