会社の登記申請中にできなくなることとは?

会社の契約や銀行とのやりとりの中で頻繁に必要となる会社謄本(正式名称を「履歴事項全部証明書」といいます。)や会社の印鑑証明書。それらの取得や閲覧ができなくなるいくつかのケースがあります。本ブログでは司法書士であるわたしが、その理由や対応方法について、まとめています。

こんなお困り事はありませんか?
  1. 会社謄本が必要といわれて法務局へ取りに行ったけれど、突然、「いまは取得出来ません」と窓口で言われた。
  2. 取引先から『取引前に御社の登記情報を取得して内容確認させていただこうとしたところ、「登記申請中により取得できません」との表示がでたので、取引を進めることができません』と言われた。
  3. 重要な取引の前に会社の印鑑証明書を法務局にとりにいったところ、法務局の人から「いまは、印鑑証明書をお出しすることはできません」と言われた。
  4. メインバンクから、『与信の関係で御社の登記情報を確認しようとしたところ、「御社の登記情報は取得できない」という表示がでているので、登記情報の内容が確認できませんでした』と言われた。
  5. 会社所有の不動産の決済の直前に、会社の印鑑証明書を取得しに行ったところ、今まで印鑑証明書を取得できていた法務局で取得することができず、担当する司法書士から「このままで決済することができませんよ。」と言われた。
目次

登記申請中に取得できなくなる証明書とは

  1. 登記事項証明書(会社謄本)
    登記申請中は、会社謄本を取得することができません。これは、登記記録にロックがかかり、変更中の情報が反映されていない証明書が出回ることを防ぐためです。
    *会社の登記簿のみならず、不動産の登記簿についても、同様に登記申請中は取得することができなくなります。
  2. 印鑑証明書
    原則として、登記申請中は会社の印鑑証明書も取得できません

取得できなくなる理由

次のような理由で謄本や印鑑証明書をとることができなくなります。

  • 登記記録のロック:登記申請が受け付けられると、会社の登記記録にロックがかかります
  • 情報の整合性:変更登記が反映されていない証明書が出回ることを防ぐためです
  • 虚偽の証明書発行防止:申請中に証明書を発行すると、タイミングによっては虚偽の内容になる可能性があります

例外的な取得可能性

ただし、印鑑証明書に関しては、以下の条件を満たす場合に限り、取得できる可能性があります:

  1. 管轄法務局での請求
    印鑑証明書を会社の本店を管轄する法務局で請求する場合
    *通常、印鑑カードをもっていれば全国どこの法務局でも印鑑証明書は取得出来ますが、この場合は「管轄の」法務局に限られます。
  2. 記載事項に変更がない場合
    申請中の内容が印鑑証明書の記載事項(商号、本店、代表者氏名、代表者生年月日)に変更を生じさせな場合

例えば、目的変更や増資及び代表者の変更を伴わない役員変更の登記申請中であれば、印鑑証明書を取得できる可能性があります。
会社の印鑑証明書の記載内容を変更させる商号変更、本店移転、代表者変更(代表者が1名の場合)の登記申請中は取得できません。

*上記の例外的な対応方法で取得出来る場合でも、通常の発行時に比べてかなり時間がかかることがあります。

対処方法

  1. 事前準備:登記申請前に必要な部数の証明書を取得しておくことをおすすめします
  2. 管轄法務局での申請:管轄法務局の窓口で申請すると、登記申請をしていない部分の証明書は発行してもらえる可能性があります
  3. 待機:登記申請から完了までは通常2週間から3週間程度かかります。急ぎの場合は、この期間を考慮して計画を立てる必要があります
    *全国各地の法務局にて登記申請から完了までの所要期間の目安が知りたい方は、こちらをご確認ください。

結論

登記申請を依頼してから、その登記申請までに、重要なご契約やお取引などが発生することはあろうかと思います。ですので、登記申請の依頼時には、そのような重要なご契約やお取引などを直近で控えていないかを司法書士にお伝えください。そのような情報をいただくことで、司法書士にて、登記申請のタイミングを調整することにより、御社のご契約などに影響ができないよう対応することが可能です。

また、重要なご契約やお取引などがある場合は、事前に必要な証明書を取得しておくことが重要です。通常、会社謄本を提出する場合には、発行日から提出日までの有効期限の制限がないことがほとんどですし、また、会社の印鑑証明書を提出する場合には、提出日の3ヶ月以内前の日に発行されたであれば問題ないことがほとんどです。

なお、やむを得ない場合は管轄法務局に相談することで、状況に応じた対応が可能な場合もあります。しかし、管轄の法務局が遠方の場合には、対応することが困難です。よって、事前に取得するなどの対応をしておくほうがベターでしょう。
その他、登記手続きについてご不明、ご不安な点がありましたら、いつでもお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。


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この記事を書いた人

石本 憲史のアバター 石本 憲史 司法書士・スタートアップデザイナー®

大阪司法書士会東支部 所属(第4973号)
簡易裁判所訴訟代理権等能力認定(第1201092号)

●所属団体
BAMBOO INCUBATOR、smartroundパートナー

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