原本還付とは?

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原本還付の概要

原本還付とは、登記申請書に添付した書類の原本を返却してもらう手続きです。会社に関する登記である商業登記では、原本還付が可能な書類に制限がありません(商業登記規則49条)。
*不動産登記では、一部、原本還付ができない書類があります(不動産登記規則55条第1項ただし書)。

・商業登記規則49条
 登記の申請人は、申請書に添付した書類の還付を請求することができる。

・不動産登記規則第55条第1項
 書面申請をした申請人は、申請書の添付書面(磁気ディスクを除く。)の原本の還付を請求することができる。ただし、令第十六条第二項、第十八条第二項若しくは第十九条第二項又はこの省令第四十八条第三号(第五十条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第二項第三号若しくは第百五十六条の六第二項(第百五十六条の七第二項後段において準用する場合を含む。)の印鑑に関する証明書及び当該申請のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでない

原本還付の方法

  1. 原本のコピーを作成し、「原本と相違ない」旨を1枚目に記載して押印します(商業登記規則第49条第2項本文)。
    *現在、法律上、押印は不要とされていますが、実務的慣行として押印することが多いです。
  2. コピーと原本を一緒に法務局に提出します。
  3. 法務局職員が確認後、登記完了時に原本が返却されます。
    法務局による説明ページはこちら

・商業登記規則第49条第2項本文
 書類の還付を請求するには、登記の申請書に当該書類と相違がない旨を記載した謄本をも添付しなければならない。

注意点

  • 原本還付の請求は登記申請と同時に行う必要があります。
  • 商業登記では印鑑証明書を含むすべての書類が原本還付可能です。
    なぜならば、「できない」とする根拠規定が存在しないためです。
  • 原本還付すべき書類が複数枚ある場合には、合綴してⅠ枚目のページに上記の処理をすれば、すべてのページに割り印までする必要はありません。
  • 添付書類が何ページにもわたる場合、登記に必要となる部分だけの写しを提出することによって、添付書類全体の還付をすることができます。
    株主総会議事録や取締役会議事録に機密事項が記載されている場合に該当箇所以外の写しを提出する(該当箇所以外をマスキングして提出することも可能)。
    cf.)「払込を証する書面」として通帳の写しを提出する場合に、該当の入出金以外の箇所をマスキングする
    ただし、定款や規則などについては、全文の謄本が必要とする先例(昭和35・9・26民甲1110号)があるため、登記に必要な部分のみの写しの提出では足りないとされることもあるので、注意が必要です。

原本還付の利点

他の手続きでも使用したい書類がある場合、原本還付を利用することで再取得の手間を省くことができます。

ただし、弊所では、あくまで登記手続のために取得しご提供いただいた書類ですので、基本的には原本還付処理を行わず、原本を法務局に出し切りの形での対応とさせていただいております。
*登記完了後に別の目的での使用が予定されている場合などには、例外的に原本還付処理を施した上で、他の登記完了書類とともに、ご返却することも可能です。ご希望の際には、ご依頼時にその旨、お申し付けください。

その他

  • 原本還付を忘れると、登記完了後に原本を取り戻すことが非常に困難になります。
  • 定款については通常原本還付を行わず、会社保管の原本から作成したコピーの末尾に「本書は当会社の原稿定款に相違ない旨」の証明を付して提出することが一般的です。

司法書士からひと言

商業登記の原本還付は柔軟性が高いですが、申請時に忘れずに請求することが重要です。必要な書類については事前に確認し、適切に手続きを行うことをお勧めします。


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この記事を書いた人

石本 憲史のアバター 石本 憲史 司法書士・スタートアップデザイナー®

大阪司法書士会東支部 所属(第4973号)
簡易裁判所訴訟代理権等能力認定(第1201092号)

●所属団体
BAMBOO INCUBATOR、smartroundパートナー

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