「登記の管轄」というのは、簡単に言うと、ある会社に関する登記手続きをどこの法務局で行うかということです。例えば、あなたが大阪市内で会社を経営しているとしましょう。この会社に関する登記手続きは、大阪市を管轄する大阪法務局の本局で行うことになります。この法務局が管轄法務局と呼ばれます。
目次
管轄の法務局の役割
昔は、ある会社に関するあらゆる手続きを、会社の最寄りの法務局でしか行えませんでした。例えば、登記簿謄本(現在の登記事項証明書)を取得するには、わざわざその会社の管轄の法務局まで行く必要がありました。でも、今はシステムが発達したおかげで、多くの手続きが全国どこの法務局でも可能になっています。ただし、まだ完全には移行が終わっていないので、手続きの種類によっては、管轄の法務局でしか行えないものもあります。
手続き別の管轄
では、具体的にどんな手続きがどこでできるのか見ていきましょう。
- 登記の申請:これは必ず管轄の法務局で行う必要があります。
- 登記事項証明書(会社謄本)の取得:これは全国どこの法務局でも可能です。
- 印鑑証明書の取得:印鑑カードさえもっていれば、全国どこの法務局でも可能です。
- 閉鎖登記事項証明書の取得:基本的には全国どこの登記所でも可能ですが、古いものは管轄の法務局でしか取得できないことがあります。
*「閉鎖登記事項証明書」とは、現在の会社謄本には記載されていない過去の内容まで確認できる会社謄本をいいます。
管轄法務局の調べ方
さて、自分の会社の管轄を知りたい場合はどうすればいいでしょうか。主に2つの方法があります。
- インターネットで調べる:法務省のホームページに、全国の法務局の情報が載っています。
- 司法書士に聞く:司法書士に、会社の本店住所を伝えれば、すぐに解答が返ってくるでしょう。
地域別の法務局
ここで、日本の主な地域ごとの法務局を見てみましょう。
- 北海道地方:札幌法務局管内
- 東北地方:仙台法務局管内
- 関東甲信越地方:東京法務局管内
- 中部地方:名古屋法務局管内
- 近畿地方:大阪法務局管内
- 中国地方:広島法務局管内
- 四国地方:高松法務局管内
- 九州・沖縄地方:福岡法務局館内
これらの法務局の下に、各都道府県の地方法務局や支局、出張所があります。
*全国の法務局の管轄一覧については、こちらをご確認ください。
よくある質問
管轄は会社を作ったときからかわることはないのですか?
管轄は、管轄外へ本店移転(主に特別区や市町村、都道府県をまたぐような本店の引越し)をした場合に代わります。
下記にいくつか法務局の管轄が代わる例をあげます。
- 大阪市⇒神戸市内 (大阪法務局⇒神戸地方法務局)
- 大阪市⇒京都市内 (大阪法務局⇒京都地方法務局)
- 堺市⇒大阪市内 (大阪法務局堺支局⇒大阪法務局)
- 大阪市⇒東京都渋谷区 (大阪法務局⇒東京法務局渋谷出張所)
- 大阪市⇒東京都新宿区 (大阪法務局⇒東京法務局新宿出張所)
- 東京都新宿区⇒東京都渋谷区 (東京法務局新宿出張所⇒東京法務局渋谷出張所)
- 東京都新宿区⇒東京都港区 (東京法務局新宿出張所⇒東京法務局港出張所)
法務局と支局、出張所の違いはなんですか?
法務局は法務省の地方組織の中で上位に位置し、支局及び出張所はその下部組織になります。
- 法務局:全国を8ブロックに分けて設置されている上位機関
- 地方法務局:都道府県単位で設置されている機関(全国42カ所)
- 支局及び出張所:法務局や地方法務局の出先機関
管轄外への本店移転を行いました。前の管轄の法務局ではなにができるのですか?
管轄外への本店移転をした場合、以後の登記申請については全て新たな管轄の法務局に対して行うことになります。しかし、会社謄本や印鑑証明書の取得は、移転前の管轄の法務局でもできますし、また、前の管轄の法務局では、新しい管轄へ移転する前の登記履歴がわかる閉鎖事項証明書を取得することができます。
いまの管轄の本店所在地で確認できるよりもっと前の登記事項を確認したいとなった場合には、前の管轄の法務局まで足を運び、閉鎖事項証明書を取得することが必要になるケースもあります。
*本店の移転登記に関する詳細については、こちらをご覧下さい。
管轄の法務局に足を運ばなくても、インターネットで会社の印鑑証明書の取得請求をすることができると聞きましたが、本当ですか?
はい、本当です。ただし、インターネットで印鑑証明書を請求するには、申請人である会社が電子認証登記所の電子証明書を添付してその送信をする必要があります。この場合の電子認証登記所の電子証明書とは、法人を設立するだけで取得できるものではなく、別途、管轄の法務局に対してその取得請求をしなければ、取得することができません。
この証明書は、同じくそれをもって電子署名がすることができるマイナンバーカードと異なり、有料で発行してもらう証明書となります。
*電子認証登記所の電子証明書に関する詳細については、こちらをご覧下さい。
印鑑カードをもって、法務局へ行った場合、どのような流れで印鑑証明書を取得することができますか?
まず、法務局の該当フロアの入り口付近になるタッチパネル方式の証明書発行請求機を操作してください。発行請求機に、今回印鑑証明書を取得する会社の管轄を入力してください。その後、会社の代表者の生年月日の入力(元号で登録している場合には元号を選択)を求められますので、発行請求機にそれを入力してください。なお、外国人の場合、西暦で入力することも可能です。
入力後、請求内容と手数料を確認後、受取人の名前を請求機に入力し(フルネームでなくても結構です)。整理番号表票を受けとってください。名前が呼ばれるまでに整理番号票に記載された手数料相当額の収入印紙をあらかじめ購入してください。
名前が呼ばれたら、窓口に行き、持参した印鑑カードを提示の上、整理番号票と引換えに受領した申請用紙に収入印紙を貼付してください。
以上の手続を踏むことで、法務局の窓口で、印鑑証明書を取得することができます。
*1度に発行できる同一の証明書の上限は、10通となっていますので、ご注意ください。
司法書士からひと言
登記の管轄は、一見複雑に見えるかもしれません。でも、一般の方が手続を行う際には、基本的に「会社の本店所在地がある場所の最寄りの法務局」と覚えておけば大丈夫です。不安な場合は、懇意にしている司法書士に連絡して確認するのが一番確実です。普段はあまり意識することはありませんが、登記に関する事務手続をする際には、この管轄という概念が関わってきます。これを理解した上で、効率的に司法書士とコミュニケーションをとって、手続を進めていきましょう。
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