インターネット版官報と登記

官報を登記の添付書類とするときは、今までは、紙の官報を原本還付した上で、法務局へ提出していました。しかし、2023年1月27日の閣議了解をうけ、商業・法人登記のオンライン申請において、同日以降、紙の官報に代わる添付書面情報として、インターネット版官報を利用することができるようになっています(DLしたPDFファイルを添付すればOK)。
このブログでは、インターネット版官報とは何か、及びそれを登記手続に使用する場合の具体的な注意点まで、わかりやすく説明していきます。

目次

そもそもインターネット版官報とは?

インターネット版官報は、独立行政法人国立印刷局が提供する官報のオンラインサービスです。こちらのページから閲覧することができます。
直近90日間の官報情報(本紙、号外含む)を全て無料で閲覧できます。
2023年12月22日以降は、当日発行分の全体目次と冊子単位でまとめた結合PDFがそれぞれ掲載されています。

また、インターネット版官報には、電子署名とタイムスタンプが付与され、紙の官報との内容の同一性が確保されています。
*インターネット版官報PDFの署名検証をすると、セコムパスポートの電子証明書国立印刷局により電子署名がなされていることがわかります。

インターネット版官報が登記申請の添付書類として利用可能に

下記法務省のサイトにも、インターネット版官報の添付書面として使用できる旨が記載されています。

インターネット版官報は、官報に代わるべき添付書面情報として利用することができます。なお、該当の記事が掲載されている1ページごとの官報PDFのみを送信してください。

≫商業・法人登記のオンライン申請について「第3 電子証明書の取得の注10」(法務省)

官報を添付する登記申請

官報が登記申請の添付書類となるケースの一例は次のとおりです。

  • 資本金の額の減少
  • 株券の廃止(株券発行会社が実際に株券を発行しているケース)
  • 吸収合併、吸収分割等の組織再編行為のうち、株券提出公告や債権者保護手続きが必要なケース

法律上は官報公告が必要であるが、官報を添付しない登記

会社法の法律上、その手続の実施にあたっては、官報公告が必要となるが、登記申請にあたっては、官報がその添付書類とならないケースもあります。一例は次のとおりです。

  • 解散及び清算人就任の登記
    *解散及び清算人就任の登記についての詳細は、こちらをご確認ください。(準備中)
  • 組織変更の登記(合同会社から株式会社への変更登記)
    *合同会社から株式会社への移行の登記についての詳細は、こちらをご確認ください。(準備中)

よくある質問

インターネット版官報は、掲載予定日の何時頃に公開されますか?

原則として、掲載日の午前8時30分頃に公開されるとされています。
その他、インターネット版官報に関するよくある質問については、こちらもご参照ください。

インターネット版官報をDLしてから登記申請に使用するまでの有効期間はありますか?

有効期間は特に定められていません。

インターネット版官報を出力したものを、登記に添付して使用することはできますか?

紙の原本を提出するか、オンライン申請による場合に電子署名が施されたPDFデータを添付するかのいずれかの方法による必要があり、インターネット版官報のPDFデータを出力した紙をその添付書類として法務局に提出して処理を進めることはできません

インターネット版官報では確認できない90日より前の官報に掲載された情報を知りたい場合は、どのように調査すればよいですか?

90日より前の官報情報や、より詳細な検索機能が必要な場合は、「官報情報検索サービス」という有料サービスを利用する必要があります。このサービスでは、昭和22年(1947年)5月3日以降の官報を半永久的に閲覧することができます。
こちらのサービスは有料となりますが、お近くの図書館などでは契約していることも多いため、90日より前の官報の情報を知りたい場合には、図書館まで足を運んで、こちらのサービスで情報検索することをご検討ください。

登記に添付書類としてインターネット版官報が使えるようになったことはわかりました。これから、官報自体も紙の発行がなくなり、電子での発行のみになる予定などはありますか?

行政のデジタル化の一環として、2023年12月6日に「官報の発行に関する法律」が成立し、2023年12月13日に公布されました。この法律により、インターネット版官報に法的な効力が付与されることになりました。同法の施行日である2025年7月1日以降は、従来、紙の印刷物として発行されてきた官報が電子化されることが予定されています。
*詳細については、こちらからご確認ください。

司法書士からひと言

 行政のデジタル化推進の中で、従前まで紙の発行しかされていなかった官報も、将来的に、全て電子での発行を予定されているなどDX化の波はどんどん押し寄せています。しかし、司法書士の中には、このような改正があったことを知らず、従前通り紙の官報を法務局へ提出している人達が多いのも事実です。
 紙の官報を添付書類として登記申請をする場合には、それが発行されてから事務所に届くまでのタイムラグが生じます。それに比べて、インターネット版官報を添付書類とする場合には、発行日と同日にDLし、それをそのまま添付情報として添付し、即日登記申請することができます。
 よって、紙の官報を添付する方法は、インターネット版官報を添付する方法よりも、どうしても登記申請が遅くなり、ひいては登記の完了も遅くなる可能性が高いです。
 登記手続は、円滑かつ迅速に進めたいところ、この方法に対応している司法書士に依頼するか対応していない司法書士に依頼するかは、判断基準の一つになりえるのではないかと思います。
 完全オンライン申請や、インターネット版官報を利用した登記申請など、ペーパーレスでスムーズな登記手続きをご希望されるお客様は、ぜひ一度弊所までお問い合わせいただけますと幸いです。


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この記事を書いた人

石本 憲史のアバター 石本 憲史 司法書士・スタートアップデザイナー®

大阪司法書士会東支部 所属(第4973号)
簡易裁判所訴訟代理権等能力認定(第1201092号)

●所属団体
BAMBOO INCUBATOR、smartroundパートナー

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