ストックオプションや投資家向けに新株予約権を発行したとき、登記の登録免許税はいくらかかるのでしょうか? 新株予約権の登記は「発行」だけでなく「行使」や「消滅」でも申請が必要になり、そのたびに税額の計算方法が変わります。発行は申請1件につき9万円ですが、資本金の増加を伴う行使は増加額の1000分の7(最低3万円)、消滅や内容の変更は3万円です。本ブログでは、新株予約権の登記の登録免許税について、発行・行使・消滅の場面別に、わかりやすく説明します。
新株予約権の登記の登録免許税とは
登録免許税とは、登記や許認可などの手続きを受けるときに国へ納める税金です(登録免許税法2条)。商業登記では登記の種類ごとに税額表が定められており(登録免許税法別表第一)、新株予約権に関する登記は同表24号に規定されています。新株予約権は登記事項なので(会社法911条3項12号)、発行したときだけでなく、行使や消滅によって登記の内容が変わったときにも変更登記が必要になり、そのたびに登録免許税がかかります。
発行時の登録免許税は9万円
新株予約権を発行したときの登録免許税は、申請1件につき9万円です(登録免許税法別表第一24号(1)ヌ)。投資家向けに有償で発行する新株予約権でも、役職員に無償で付与するストックオプションでも税額は変わりません。登録免許税は「発行という登記の種類」に対してかかるものであり、払込金額の有無や金額の大小では変わらないためです。
ポイントは「申請1件につき」という単位です。税額は付与する人数や新株予約権の個数ではなく申請件数で決まるので、同じ条件の新株予約権を同じ日に複数の投資家へ発行し、1件の申請にまとめられれば9万円で済みます。
反対に、発行日がずれるたびに別の申請になると、そのたびに9万円がかかります。投資家ごとにクロージング日がずれやすい資金調達では、発行日をそろえる、あるいは最初の発行日から2週間以内にまとめて申請する、という設計にしておくと無駄がありません。
行使時の登録免許税は資本金増加分×1000分の7
新株予約権が行使されると、出資された金額の一部または全部が資本金に組み入れられます。この資本金増加分にかかる登録免許税は、増加額の1000分の7(3万円に満たないときは3万円。登録免許税法別表第一24号(1)ニ)です。
あわせて、行使によって未行使の新株予約権の数は減りますが、この変更は資本金の増加登記に伴って一体的に処理されるため、行使時の登録免許税は資本金増加分(ニ)のみですこの場合に,新株予約権の行使により,資本金の額の変更登記のほか新株予約権の変更登記も申請することになりますが,登録免許税の額は,増加した資本金の額に1,000分の7の税率を乗じて算出した額を納付する限り,新株予約権の変更登記に係る登録免許税を別途納付する必要はないと解されています(清水湛「登録免許税法詳解」158頁・金融財政事情研究会)。
なお、行使をしても資本金が増えないケース(自己株式のみを交付する場合など)は、一律3万円(同24号(1)ツ)になります。
発行や期間満了による消滅などの変更登記は、原則として変更の日から2週間以内に申請します(会社法915条1項)。行使による変更登記にはこれとは別に特則があり、その月の行使分をまとめて、月末から2週間以内に申請すれば足ります(同条3項)。
行使のたびに申請すると、そのたびに登録免許税と司法書士報酬がかかります。月末までの行使分をまとめて月1回の申請にする運用にしておくと、件数そのものを減らすことができます。
消滅・消却・放棄・内容の変更は3万円
新株予約権が行使されずに期間満了で消滅したとき、会社が自己新株予約権を消却したとき、新株予約権者が放棄したとき、そして行使価額や行使期間といった内容を変更したときは、いずれも登録免許税は3万円です(登録免許税法別表第一24号(1)ツ)。これらは「発行」でも「資本金の増加を伴う行使」でもない、その他の変更登記としてまとめて扱われています。
税制適格ストックオプションで行使価額を後から調整するケースや、退職した役職員の新株予約権を消却するケースは珍しくありませんが、いずれも登録免許税は同じ3万円です。ただしこれは税額の話で、司法書士報酬は別にかかります。また、行使価額や行使期間を変更できるか、どの手続きが要るかは発行時の決議や契約次第で、税制適格性への影響は税理士との確認が必要です。
| 場面 | 登録免許税 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 発行(有償・無償とも) | 9万円(申請1件につき) | 登録免許税法別表第一24号(1)ヌ |
| 行使(資本金の増加を伴う場合) | 増加額×1000分の7(最低3万円) | 同24号(1)ニ |
| 消滅・消却・放棄・内容の変更(資本金が増えない行使を含む) | 3万円 | 同24号(1)ツ |
費用を抑える登記の設計
無駄な出費を防ぐポイントは2つです。発行日をそろえて申請を1件にまとめること、そして行使を月末ごとにまとめて申請することです。どちらも登記のタイミングの設計なので、契約書やストックオプション規程を作る段階で相談しておくと安心です。
よくある質問
司法書士からひと言
新株予約権の登録免許税は、発行時の9万円だけが独り歩きしがちですが、実際には行使や消却、内容の変更のたびに登記のタイミングが訪れます。ストックオプション制度を設計する段階で「行使はいつまとめて登記するか」まで決めておくと、税額そのものより、その都度の事務対応にかかる負担を抑えられます。制度設計と登記実務は切り離さず、早い段階でご相談いただくことをおすすめします。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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