株主総会に、顧問税理士や総務担当の従業員、株主のご家族を同席させてもよいのでしょうか? 会社法は株主以外の者の出席を当然には認めていませんが、議長の議事整理権(会社法315条)のもとで、会社が任意に傍聴を認めることはできます。ただし、傍聴者として同席する人は議決権を行使できません。本ブログでは、株主以外の人を株主総会に同席させるときの考え方と、実務での注意点について説明します。
株主総会に出席できる人とは
株主総会に出席する権利があるのは、株主本人と、委任状によって議決権の行使を委任された代理人です(会社法310条1項)。代理人は株主である必要はなく、定款で「株主以外のものは代理人となることができない」として代理人の資格を制限している場合を除き、株主に代わって議決権を行使できます。株主以外の代理人資格をどこまで制限することが認められるかについては学説がわかれるところですが、少なくとも判例上は、株主以外の者によって総会が攪乱されることを防ぐ目的の、合理的な理由による相当程度の制限であれば認められるとされています。
実務上は、ベーシックな定款の雛形には、この株主以外の代理人に関する資格制限が定められており、実務上、株主以外の代理人が出席し、議決権を行使することは稀です。、
取締役、会計参与、監査役及び執行役は、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合でない限りにおいて、出席した株主総会において株主から求められた事項について必要な説明をする義務を負います(会社法314条)。ただし、これは株主以外の者を任意に同席させてよいかという論点とは別の話です。会社法には、これら以外の第三者の出席を一般的に認める規定はなく、当然に同席できるわけではありません。
なお、株主が法人で、その職員が代理人として出席する場合の代理人資格や、代理人の資格を株主に限る定款の定めについては、別の記事委任状で議決権を行使してもらうには? 代理人を株主に限る定款の定めで扱っていますので、あわせてご覧ください。
議長の議事整理権で任意に認めることはできる
もっとも、会社法は株主以外の同席を禁止しているわけではありません。株主総会の議長は、総会の秩序を維持し議事を整理する権限を持ち、命令に従わない者や秩序を乱す者を退場させることもできます(会社法315条)。この議事整理権の裏返しとして、会社が株主以外の者の傍聴を任意に認めることは可能だと考えられています。
傍聴者として同席する人は、議決権を行使できません。ただし、ここでいう「株主以外」には代理人は含みません。委任状により代理人として認められた人は、株主でなくても株主本人に代わって議決権を行使できます(会社法310条1項)。また、傍聴を認められただけで、株主と同じように質問や意見を述べる権利が生じるわけでもありません。ただし、議長の許可を受けて、顧問税理士などが取締役等の説明を補助することはできます。この場合も、会社法314条に基づく説明義務を負うのは取締役等本人です。
実務でよくある同席のケース
実務でよく相談を受けるのが、顧問税理士や弁護士、司法書士の同席です。決算内容や登記事項について説明を補足してもらう場合は、どの議題で発言を求めるか、議長がどのタイミングで許可を出すかを、あらかじめ決めておきます。総務担当の従業員が議事録作成や受付対応のために同席する場合も、運営を補助する立場であることを株主に伝えておきます。
高齢の株主に家族が付き添う場合は、移動の介助なのか、聞き取りの補助なのかを先に確認しておきます。報道関係者が取材のために同席を希望するケースもありますが、いずれも法律上は会社の任意判断です。当日いきなり議長が判断するのではなく、総会の冒頭で同席者の氏名と役割を説明して承認を得ておくと、異議が出た場合もその場で理由を聞いて扱いを検討できます。
受付でどう対応するか
同席者の可否とあわせて実務上悩ましいのが、受付での確認です。受付では、来場した人が誰かという本人確認と、その総会で議決権を行使できるかどうかの確認を分けて考えます。株主名簿や、基準日を設けている場合はその基準日時点の記載をもとに、出席資格と議決権数を確認できる一覧を準備します。代理人については、委任状と本人確認書類に加えて、定款上の代理人資格も確認します。株主以外の同席者は、そもそも株主名簿と照合する対象がないため、受付名簿とは別に「同席者」として氏名と役割を記録しておきます。総会当日にトラブルが起きたときや、あとから決議の有効性を確認する必要が生じたときに、誰がどの立場で会場にいたかを説明できるようにするためです。
役員変更や定款変更、増資など登記が必要な決議をした総会では、この議事録が登記の添付書面になります(商業登記法46条2項)。議事録の記載事項は会社法施行規則72条3項に定められていますが、傍聴者は出席株主数や出席株主の議決権数には含めません。議事録に任意で記載するなら、たとえば「議長は、決算説明を補助するため顧問税理士を同席させる旨を諮り、承認を得た」のように、同席の目的と承認の経過を記しておきます。代理人が出席した場合は、どの株主の議決権を代理行使したのかが分かるように、委任状や出席記録と対応させておきます。
よくある質問
司法書士からひと言
「税理士さんにも同席してもらって大丈夫ですよね」と、総会の準備中に聞かれることがあります。同じ会場にいても、株主の代理人と、説明を手伝う税理士と、付き添いのご家族では、認められる役割が違います。議事録に「出席者」とだけ並んでいると、あとから見返したときに、その方がどの立場で会場にいたのか分からなくなります。ご相談のときは、同席する方の役割を受付の名簿にも書き添えていただくようお願いしていて、招集通知を出す前にその一覧を一緒に確認しています。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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