増資の払込みが終わってひと安心したところで、登記はいつまでにすればよいのでしょうか? 募集株式の発行によって登記事項に変更が生じたときは、「変更の日」から2週間以内に登記を申請しなければなりません(会社法915条1項)。起算点となる「変更の日」は、払込期日を定めたときはその期日、払込期間を定めたときは期間の末日と考えれば大丈夫です。払込期日を数日過ぎただけのつもりが、気づけば登記期限も過ぎていた、というご相談は珍しくありません。本ブログでは、増資の登記期限と、払込期日・払込期間ごとの「変更の日」の数え方について、わかりやすく説明します。
増資の登記期限とは
増資の登記期限とは、募集株式の発行によって発行済株式の総数や資本金の額に変更が生じたとき、その変更の日から2週間以内に本店所在地で変更登記を申請しなければならないという期限のことです(会社法915条1項)。募集株式の発行では、払込期日を定めた場合はその期日に、払込期間を定めた場合は各引受人が出資を履行した日に、引受人が株主になります(会社法209条1項)。これが増資の効力発生で、登記はそれとは別の手続きです。2週間以内に必要なのは登記の「申請」であり、法務局での審査と登記の完了までをこの期間内に終える必要はありません。登記が完了すると、変更後の発行済株式の総数や資本金の額が登記記録に反映され、対外的に公示されます。増資の効力発生と、登記の申請期限は別物である、という点をまず押さえておきたいところです。
「変更の日」はいつになるか
増資の登記期限を数えるうえで、一番わかりにくいのが「変更の日」がいつを指すかという点です。会社法209条1項は、募集株式の払込期日を定めた場合はその期日に、払込期間を定めた場合は出資の履行(払込み)をした日に、それぞれ引受人が株主になると定めています(会社法209条1項1号・2号)。払込期日という1日を決めておけば、その日が登記上の「変更の日」になります。一方、たとえば「10月1日から10月15日まで」のように払込期間を定めた場合は、出資者ごとに払込みをした日がばらばらに「変更の日」になりうる、ということです。
払込期間を定めた場合は期間の末日が起算点になる
払込期間を定めると、出資者ごとに変更の日が変わってしまい、そのままでは登記の起算点も出資者の数だけ発生しかねません。この点を調整するため、会社法915条2項は、払込期間を定めた場合の変更登記は、その期間の末日現在の状況にもとづき、末日から2週間以内にすれば足りると定めています。出資者が複数いても、期間の末日を基準に1回の登記でまとめて申請できる、という実務上ありがたい特則です。第三者割当増資で複数の投資家から日をずらして払い込みを受けるときは、払込期日を1日に固定するか、払込期間を設定して末日基準でまとめるか、どちらの設計にするかをあらかじめ決めておくと、登記の準備もスムーズに進みます。
初日不算入の数え方(払込期日が9月1日の場合)
登記期限の「2週間」を数えるときは、変更の日そのものは数えません。民法140条は、日・週・月・年によって期間を定めたときは、期間の初日を算入しないと定めています(初日不算入の原則)。たとえば、払込期日を9月1日と定めた場合、変更の日である9月1日は数えず、翌9月2日を1日目として数え始めます。2週間は14日ですから、14日目にあたる9月15日が登記の期限です。結果として、払込期日の2週間後の同じ曜日が期限になる、と覚えておくと分かりやすいと思います。
期限の末日が土曜日・日曜日・祝日や年末年始の休日にあたるときは、登記所が閉庁しているため、その翌開庁日が期限になります(行政機関の休日に関する法律2条)。期限が月末や連休の前後にかかる増資では、この点もあわせて確認しておくと安心です。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 登記期限の原則 | 変更の日から2週間以内 | 会社法915条1項 |
| 払込期日を定めた場合の変更の日 | その期日 | 会社法209条1項1号 |
| 払込期間を定めた場合の登記の起算点 | 期間の末日 | 会社法915条2項 |
| 期限を過ぎた場合 | 登記自体はできるが、100万円以下の過料の対象になりうる | 会社法976条1号 |
期限を過ぎたらどうなるか
登記期限の2週間を過ぎても、登記の申請自体ができなくなるわけではありません。ただし、正当な理由なく期限内に登記を怠ると、当時の代表者個人が100万円以下の過料の対象になりえます(会社法976条1号)。過料は会社にではなく、申請義務を負っていた代表者個人に科される点に注意が必要です。遅れに気づいたら、必要書類を確認して速やかに申請してください。申請を済ませても、期限を過ぎたことによる過料の可能性がなくなるわけではありません。とはいえ、期限を意識していなかったために「気づいたら数か月経っていた」というご相談も実際にあり、払込みが終わった時点で登記の期限をカレンダーに入れておくことをおすすめします。
期限に間に合わせるための設計
増資の登記を無理なく期限内に申請するコツのひとつは、払込期日と定款変更の効力発生日をそろえておくことです。優先株式を新たに発行するときなど、定款変更と募集株式の発行を同時に進める場合は、まず発行に必要な定款の定めが払込期日までに効力を生じるように日程を組みます。そのうえで効力発生日をそろえておけば、登記事項の変更点をまとめて把握でき、申請期限の管理も1本にまとまります。
もうひとつのコツは、登記の完全オンライン申請を活用することです。書類を法務局に持参・郵送する必要がないため、払込後の申請を進めやすくなります。ただし、添付書類の電子化や電子署名の準備が事前に必要なので、払込前に申請方法と書類の準備状況を確認しておきましょう。
よくある質問
司法書士からひと言
登記期限のご相談で多いのは、「払込みは終わっているのに、登記のことをすっかり忘れていた」というケースです。だからこそ、払込期日を決める段階で、登記の期限までカレンダーに入れておくことをおすすめしています。払込みが完了した瞬間に、次のタスクとして登記の申請日が見えている状態を作っておく。準備の段取りに期限までの逆算を組み込んでおくのが、結局いちばんの近道だと感じています。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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