代表取締役が引っ越したとき、登記はどうすればよいのでしょうか? 代表取締役の住所は登記事項なので(会社法911条3項14号)、転居してから2週間以内に住所変更登記を申請しなければなりません(会社法915条1項)。登録免許税は資本金1億円以下の会社で1万円、1億円を超える会社で3万円です(登録免許税法別表第一24号(1)カ)。本ブログでは、代表取締役の住所変更登記の期限と費用について、わかりやすく説明します。
住所変更登記とは
代表取締役の住所変更登記とは、登記簿に記載されている代表取締役の住所を、実際に引っ越した後の住所に書き換える変更登記です。代表取締役の住所は、氏名とあわせて登記事項とされています(会社法911条3項14号)。登記事項に変更が生じたときは、変更の日から2週間以内に変更登記を申請しなければならないと定められているため(会社法915条1項)、代表取締役の転居もこのルールの対象になります。
なぜ代表取締役の住所だけ登記されるのか
会社を代表する権限を持つのが代表取締役です。取引先や利害関係人が連絡を取れるように、氏名だけでなく住所まで公示する必要があると考えられており、住所も登記事項とされています。
一方、代表権を持たない取締役(取締役会設置会社で代表取締役以外の取締役)の住所は登記事項ではありません。氏名だけが登記され、住所は登記簿に載らないので、引っ越しても住所変更登記は不要です。「取締役が引っ越したので登記を」というご相談を受けることがありますが、代表取締役でなければそもそも登記の対象外です。
合同会社の場合は少し事情が異なります。合同会社では、会社を代表する社員(代表社員)の氏名または名称および住所が登記事項です(会社法914条7号)。株式会社の代表取締役と同じように、代表社員個人が引っ越した場合は住所変更登記が必要になります。
期限と登録免許税
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 登記の期限 | 転居(住所移転)の日から2週間以内 | 会社法915条1項 |
| 登録免許税(資本金1億円以下) | 1万円 | 登録免許税法別表第一24号(1)カ |
| 登録免許税(資本金1億円超) | 3万円 | 登録免許税法別表第一24号(1)カ |
| 期限を過ぎた場合 | 登記自体はできるが、100万円以下の過料の対象になりうる | 会社法976条1号 |
代表取締役の住所変更登記は、他の変更登記と違って添付書類が原則不要です。住民票の提出も求められません。申請書に変更後の住所と住所移転の年月日を記載すれば足り、それを証明する書面をあわせて出す必要はないとされています。この住所移転日は、住民票の届出日と同じとは限りません。実際に生活の本拠を移した日がいつかを確認して記載してください。もっとも、法務局の窓口では住所の表記(丁目・番地の書き方など)を住民票どおりに正確に記載するよう案内されることが多いので、申請前に住民票を取得して表記を確認しておくと、補正のやり取りを避けられます。
必要になる書類
代表取締役の住所変更登記で用意するものは、他の変更登記に比べてシンプルです。
- 変更登記申請書
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
住所変更単独であれば、ご自身で申請する場合は申請書のみ、司法書士に依頼する場合は委任状を加えた2点で足ります。役員変更や本店移転など、他の登記と同時に申請する場合は、それぞれの登記に応じた議事録などが別途必要になります。次に説明する住所非表示措置をあわせて申し出るときも、その申出に必要な書類を別に準備します。
住所を非表示にする方法もあります
2024年10月1日から、代表取締役等住所非表示措置という制度が始まりました。代表取締役の住所変更登記や就任・重任の登記など、対象となる登記の申請とあわせて申し出ることで、登記事項証明書などに表示される代表取締役の住所を市区町村までにとどめ、番地や建物名を非表示にできる制度です(商業登記規則31条の3)。
非上場会社が申出をする場合は、本店の実在性を示す書面(配達証明郵便が本店に届いたことを証する書面など)、代表取締役の住所と氏名の一致を証する市区町村長等の証明書、実質的支配者の本人特定事項を証する書面などをあわせて提出するため、通常の住所変更登記とは別に準備が必要です。
ただし、この制度は登記簿上の「表示」を制限するだけで、住所変更登記そのものが不要になるわけではありません。転居した事実は引き続き2週間以内に登記する必要があり、住所に変更がある登記を申請するときは、そのたびにあらためて非表示の申出をし直す必要があります。
制度の仕組みや申出の条件については、こちらで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
登記を放置するとどうなるか
住所変更登記を忘れたまま何年も経過している会社は、決して珍しくありません。株式の異動や役員変更のような大きな出来事がないと、住所の変更だけでは気づかれにくいためです。
とはいえ、登記懈怠(とうきけたい)は過料の対象です。会社法で義務づけられた登記を怠ったとき、登記義務を負う代表者は100万円以下の過料に処せられると定められています(会社法976条1号)。実務では、役員変更や本店移転など別の登記の準備をしていて、住所が古いままだと気づくケースがよくあります。気づいた時点で先延ばしにせず、住所移転日を確認して申請しておけば、それだけ安心につながります。
よくある質問
司法書士からひと言
住所変更登記は、金額も小さく、添付書類もほとんど要らないので、後回しにされがちな登記のひとつです。役員変更や本店移転のついでに気づいて申請するというケースを実務でもよく見かけます。
法人の登記簿は、取引先や金融機関が与信調査で確認する書類でもあります。住所が古いまま放置されていると、「この会社はきちんと管理されているのだろうか」という印象につながりかねません。引っ越しをしたら、契約書の住所変更などとあわせて、代表取締役の住所変更登記も一緒に済ませてしまうことをおすすめします。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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