許可を取るのに「定款の目的が足りない」と言われた。目的変更登記の進め方

許可を取るのに定款の目的が足りないと言われた

建設業や宅建業の許可を取ろうと窓口に相談に行ったら、「定款の目的にその事業が入っていません」と言われて手続きが止まってしまった、というご相談は少なくありません。この場合、まず必要なのは定款の目的を変更し、変更登記を済ませることです。本ブログでは、許認可の窓口で目的が足りないと指摘されたときの、目的変更登記の進め方についてわかりやすく説明します。

目次

目的変更登記とは

目的変更登記とは、定款に定めた会社の事業内容(目的)を変更し、その内容を登記簿に反映させる手続きのことです。目的は定款に必ず記載しなければならない事項で(会社法27条1号)、変更するには株主総会の特別決議が必要になります(会社法466条、309条2項11号)。

では、なぜ許認可の場面で目的が問われるのでしょうか。目的は登記事項証明書にもそのまま記載され(会社法911条3項1号)、誰でも確認できる公示情報になっています。許可行政庁は申請の審査にあたって、登記事項証明書や定款の写しを確認し、「その会社が、その事業を行うことになっている会社かどうか」を見ます。目的の欄にその事業が読み取れる文言がなければ、書類として受け付けてもらえなかったり、補正を求められたりします。これが、許可申請の窓口で「目的が足りない」と指摘される理由です。また、同様の理由で、銀行から融資を受ける際に、銀行側から、事実上その会社が行っているものの謄本上その事業目的が登記されていない場合には、その旨、登記することが求められることも、少なくありません。

どんな許認可で問題になりやすいか

建設業許可、宅地建物取引業免許、産業廃棄物収集運搬業許可、古物商許可、労働者派遣事業や有料職業紹介事業の許可、旅行業登録、酒類販売業免許など、事業の許可・登録・免許制度の多くで、定款の目的が審査対象になります。それぞれの許可でどこまで具体的な文言が必要かは業種や制度ごとに異なり、同じ建設業でも申請先によって窓口の運用が違うことがあります。目的の文言そのものが許可の可否に関わる部分は、行政書士や所管の窓口に確認していただく必要がある領域です。わたくしたち司法書士が引き受けられるのは、決まった目的をどう定款に反映し、登記に落とし込むかという後工程になります。

目的の書き方のコツ

許可申請の窓口や行政書士から、目的欄に入れる具体的な文言をすでに示されているなら、その文言をそのまま定款に反映するのが確実です。特に指定がない場合は、想定する事業を具体的に書いた項目と、事業の幅を持たせるための包括的な項目を組み合わせて書くのが一般的です。定款の目的欄の最後によく置かれる「前各号に附帯関連する一切の事業」という一文は、個別の目的に付随する周辺業務を拾うためのもので、これだけで新しい事業の許可要件を満たせるとは限りません。許可が必要な事業については、行政書士や所管の窓口が示す文言に沿って、その事業を目的として個別に加えておくのが基本です。

手続の流れ

目的変更登記は、次の順で進みます。

  1. 株主総会を招集し、目的の追加を特別決議で可決する(会社法466条・309条2項11号)
  2. 目的変更の効力が生じた日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ変更登記を申請する(会社法915条1項)。決議で別の効力発生日を定めていなければ、通常は決議の日が起算日になります
  3. 登記が完了したら登記事項証明書を取得し、許可申請の窓口に提出する

株主全員が招集手続の省略に同意すれば、招集通知を出さずにその場で総会を開くことができます。開いた総会で、目的変更について特別決議を行います。急いでいる場合は、この省略ができるかどうかを最初に確認しておくと、決議までの日数を短縮できます。

時間の逆算がいちばん大事

許可の申請期限が決まっている方にとって、いちばん価値のある情報はここです。目的変更登記は、決議をした当日に完了するものではありません。申請してから登記が完了するまでには、管轄の法務局によって差はあるものの、数日から2週間程度を見ておくのが実務上の目安です(具体的な標準処理日数は管轄法務局が公表している「登記完了予定日」で個別に確認してください)。登記が完了して初めて、その内容を反映した登記事項証明書を取得できます。

したがって、許可申請の期限から逆算すると、①証明書を提出する期限、②その数日前までに証明書を取得する日、③そこから逆算した登記の完了予定日、④さらにそこから逆算した株主総会と登記申請の日、という順番で日程を組む必要があります。許可の窓口で「目的が足りない」と言われた時点で、まずこの逆算を先に済ませてしまうと、あとの動きに迷わずに済みます。

なお、緊急を要する場合には、登記を申請した後、法務局から取得することができる「受付のお知らせ」(受領証)を急ぎ行政庁に差し入れて、あとから登記事項証明書を追完することで対応を求めるケースもあります。

登録免許税

目的変更の登録免許税は、追加する目的がいくつあっても、申請1件につき3万円です(登録免許税法別表第一24号(1)ツ)。目的をひとつだけ足す場合も、十個まとめて足す場合も、税額は変わりません。

項目内容根拠
決議株主総会の特別決議会社法466条、309条2項11号
登記の期限変更の日から2週間以内会社法915条1項
登録免許税3万円(申請1件につき。目的の数は問わない)登録免許税法別表第一24号(1)ツ
登記事項目的は登記事項として公示される会社法911条3項1号

商号の変更など他の登記事項もあわせて変更する場合は、区分によって税額の考え方が変わることがあるので、その場合は個別に確認してください。

必要になる書類

  • 株主総会議事録(目的変更の特別決議を証する書面)
  • 株主リスト(商業登記規則61条3項)
  • 変更後の定款(登記申請そのものには添付しませんが、許可申請の際に提出を求められることが多い書類です)
  • 委任状(司法書士に依頼する場合)

自分でできるか

目的をひとつ追加するだけのシンプルなケースであれば、株主総会議事録や登記申請書をご自身で作成し、法務局に申請することも十分可能です。一方で、許可の申請期限までの日数が少ない場合や、目的の文言そのものをどう書けば窓口で通りやすいかの判断が必要な場合は、その時点で司法書士や連携する行政書士に相談していただくのが安心です。とくに登記の完了を待ってから許可申請に進む流れは、逆算を誤ると期限に間に合わなくなるので注意が要ります。

よくある質問

建設業許可などで、目的にどう書けば通るか教えてもらえますか?

目的の文言が許可の要件を満たすかどうかの判断は、行政書士または所管の許可行政庁の領域です。わたくしたちがお手伝いできるのは、決まった文言を定款に反映し、登記に落とし込むところまでになります。文言の相談は行政書士や窓口にあわせて行ってください。

目的変更登記だけを急いで済ませることはできますか?

可能です。株主全員の同意があれば総会の招集手続を省略できるため、決議までの日数を圧縮できます。そのうえで法務局への申請から登記完了までの日数を見込み、許可申請の期限から逆算してスケジュールを組むことをおすすめします。

登記事項証明書はいつ取得できますか?

登記が完了した後であれば、法務局の窓口やオンラインの証明書請求サービスで取得できます。管轄法務局が公表している登記完了予定日はあくまで目安ですので、実際に登記が完了したことを確かめてから証明書を請求してください。補正があれば延びることもあります。オンラインで請求する場合も、窓口受取か郵送かで受け取りまでの時間が変わります。

司法書士からひと言

許可の窓口で「目的が足りません」と言われて初めて登記のことを考える、というご相談は少なくありません。目的変更そのものは決して複雑な手続きではありませんが、許可の申請期限が先に決まっている以上、逆算のスケジュールを誤ると間に合わなくなってしまいます。窓口で指摘を受けた時点で、まず登記にかかる日数を確認するところから始めていただくのがいちばん安全です。

司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)


あわせて読みたい記事

  1. 目的の変更登記とは?
  2. 登記事項証明書と登記情報の違い
  3. 登記の完全オンライン申請とは
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

石本 憲史のアバター 石本 憲史 司法書士・スタートアップデザイナー®

大阪・北浜で「いしもと司法書士事務所(ISHIMOTO Legal)」を運営する司法書士です。
スタートアップの資金調達にともなう商業登記(種類株式・J-KISS・新株予約権・第三者割当増資)と、定款や株主間契約まわりの設計を専門にしています。
AIを日々の業務に組み込んでいる司法書士として、同業の士業向けにAI活用の顧問サービスやセミナーも行っています。
大阪司法書士会 東支部所属(登録番号 大阪第4973号)/簡裁訴訟代理等関係業務認定(第1201092号)
所属団体:BAMBOO INCUBATOR、smartroundパートナー

目次