副業の収入や家賃収入が増えてきて、いわゆる資産管理会社をつくろうと考えたとき、合同会社と株式会社では設立の費用がどれくらい違うのでしょうか? 結論から言うと、登録免許税の最低額は合同会社が6万円、株式会社が15万円で、株式会社にはさらに公証人の定款認証手数料がかかります。最低額が適用される小さな会社なら、実費の差はおおむね10万円台になります。ただし、個人名義の不動産を会社へ移す費用は設立費用とは別にかかり、こちらのほうが大きくなることも珍しくありません。本ブログでは、資産管理会社の設立登記について、わかりやすく説明します。
資産管理会社とは
資産管理会社とは、個人や家族が持っている不動産や株式などの資産を、個人名義ではなく会社名義で持ち、管理・運用するために設立する会社のことです。会社法に「資産管理会社」という会社の種類があるわけではなく、目的に着目した呼び名にすぎません。株式会社でも合同会社でも設立でき、賃貸不動産を持たせる不動産管理法人、上場株式などを持たせる金融資産管理法人、自分が経営する会社の株式を持たせる持株会社など、中身はさまざまです。副業収入のある会社員やフリーランスが事業収入の受け皿としてつくる小さな会社も、広い意味ではこの仲間に入ります。
つくる目的は、個人の資産と会社の資産を切り分けたい、将来の相続を会社の持分の承継というかたちにしたい、収入の一部を法人側に移したい、といったものが代表的です。税金に関わる判断は税理士の領域ですので、本ブログでは設立の手続きと費用、登記に絡む注意点に絞ってお話しします。
株式会社と合同会社で設立の手続きはどう違うのか
株式会社の設立には、発起人が全部の株式を引き受ける発起設立と、株主を募集する募集設立の2つの方法があります(会社法25条1項)。個人や家族が出資してつくる資産管理会社では発起設立を使うのが通常ですので、ここでは発起設立を前提に説明します。発起人が定款を作成し(会社法26条1項)、目的・商号・本店の所在地などの絶対的記載事項を記載したうえで(会社法27条)、公証人の認証を受けなければ定款の効力は生じません(会社法30条1項)。そのうえで、本店の所在地で設立の登記をすることによって会社が成立します(会社法49条)。
合同会社も、社員になろうとする人が定款を作成し(会社法575条1項)、目的・商号・本店の所在地・社員の氏名や出資の価額などを記載する点は同じです(会社法576条1項)。違うのは、公証人の認証を求める規定がないことです。合同会社の定款は社員が署名または記名押印すれば効力が生じ、本店の所在地で設立の登記をすることで会社が成立します(会社法579条)。定款認証という工程がひとつ丸ごとなくなるため、費用だけでなく設立までの日数も短くなります。
株式会社と合同会社の設立費用の比較
設立登記の登録免許税は、株式会社が資本金の額の1000分の7で最低15万円(登録免許税法別表第一24号(1)イ)、合同会社が同じく1000分の7で最低6万円(同ハ)です。資本金が100万円なら計算上は7,000円ですが、最低額が適用されるため、株式会社は15万円、合同会社は6万円になります。
株式会社には、これに公証人の定款認証手数料が加わります。手数料は2022年1月から資本金の額に応じた段階制になっており、100万円未満は3万円、100万円以上300万円未満は4万円、300万円以上は5万円です。そして2024年12月1日からは、資本金100万円未満で、発起人全員が個人で3人以下、定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載があり、取締役会を置かない、という3つの条件をすべて満たすと1万5,000円に下がります。ひとりでつくる資産管理会社は、この条件に当てはまることが多いはずです。紙の定款には4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款にすれば不要になります。
次の表は、登録免許税が最低額になる資本金(株式会社は約2,142万円以下、合同会社は約857万円以下)で、軽減措置を使わない場合の比較です。
| 費用項目 | 株式会社(電子定款) | 合同会社(電子定款) |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 15万円(資本金×0.7%、最低15万円) | 6万円(資本金×0.7%、最低6万円) |
| 定款認証手数料 | 1万5,000円〜5万円(資本金の額と条件による) | 不要 |
| 定款の収入印紙 | 不要(紙の定款なら4万円) | 不要(紙の定款なら4万円) |
| 定款謄本の手数料 | 2,000円前後 | 不要 |
| 実費の合計 | 約16万7,000円〜約20万2,000円 | 約6万円 |
この条件では、合同会社のほうが実費で約10万7,000円から14万2,000円少なく済みます。外部からの出資を考える必要がない資産管理会社で合同会社が選ばれやすいのはこのためです。金融機関や取引先が株式会社という形態に慣れていることを考えて株式会社にする判断もあります。合同会社から株式会社への組織変更は後からでもできますが、そのときにも手続きと費用がかかりますので、将来の出資者や金融機関との関係まで見通したうえで選ぶのが確実です。
設立登記に必要になる書類
株式会社の発起設立で準備する主な書類は次のとおりです。取締役会の有無や代表取締役の選び方、書面申請かオンライン申請かによって、増える書類と省ける書類があります。
- 設立登記申請書
- 公証人の認証を受けた定款
- 設立時取締役・設立時代表取締役の就任承諾書
- 設立時取締役の印鑑証明書(商業登記規則61条4項。取締役会設置会社は設立時代表取締役の分。同条5項)
- 払込みがあったことを証する書面(発起人の通帳の写しなど)
- 登録免許税の納付用台紙(収入印紙を貼付)または電子納付
- 印鑑届書(書面申請の場合。オンライン申請では印鑑の提出は任意)
合同会社では、公証人の認証を受けた定款が社員の記名押印した定款に置き換わります。代表社員を定款で直接定めるか、業務執行社員の互選で選ぶかによって、選定を証する書面や就任承諾書の要否が変わり、印鑑証明書も代表社員のものを用意します。株式会社・合同会社とも、本店の具体的な所在場所や資本金の額を定款に書かずに別途決めた場合は、その決定を証する書面が加わります。不動産などを金銭の代わりに出資する現物出資をする場合は、さらに書類が増えます。
設立後に続く手続き
株式会社には取締役の任期があり、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法332条1項)。ただし、全部の株式に譲渡制限のある非公開会社は、定款で最長10年まで伸ばすことができます(同条2項)。
資産管理会社はほぼ例外なく非公開会社ですから、任期を10年にしておくと、任期満了にともなう役員変更の登記が10年に1回で済みます。
登録免許税は、資本金1億円以下の会社なら申請1件につき1万円、1億円を超える会社なら3万円です(登録免許税法別表第一24号(1)カ)。途中で辞任や死亡があればそのつど登記が必要で、任期が満了しているのに登記をしないままにすると100万円以下の過料の対象になりますので(会社法976条1号)、設立時に任期まで決めておくと安心です。
合同会社には役員の任期という仕組み自体がありませんが、業務執行社員や代表社員が変わったとき、登記された代表社員の住所が変わったときには変更登記が必要です。
もうひとつ見落とされがちなのが社会保険です。法人の事業所は、常時従業員を使用していれば健康保険と厚生年金保険の強制適用事業所になり、報酬を受けて常時業務にあたる代表者ひとりだけの会社でも対象になります。株式会社か合同会社かで違いはありません。新規適用届は、適用事業所に該当した日から5日以内に年金事務所へ出す必要があります。
不動産を法人に移すときの注意点
賃貸不動産を持たせる会社をつくる場合、個人名義の不動産を会社へ移すには売買などの契約と所有権移転の登記が必要になり、その際に税金がかかります。ここが、試算を飛ばして設立だけ先に進めてしまい、後で驚かれるポイントです。
| 費用項目 | 内容(2026年9月時点) |
|---|---|
| 登録免許税(所有権移転) | 固定資産税評価額×2%(登録免許税法別表第一1号(2)ハ)。土地の売買は1.5%に軽減する措置あり(租税特別措置法72条1項。適用期限は2029年3月31日まで) |
| 不動産取得税 | 標準税率4%。土地と住宅の税率を3%とする特例と、宅地評価土地の課税標準を2分の1とする特例あり(適用期限は2027年3月31日まで) |
| 司法書士報酬・その他 | 所有権移転登記の報酬のほか、現物出資なら価額の証明のための費用がかかることがあります |
たとえば建物の固定資産税評価額が5,000万円の賃貸マンションを売買で移すと、建物分の登録免許税だけで100万円になり、土地分と不動産取得税を足すと数百万円規模の移転コストになります。移す資産の内訳や移転の方法で金額は大きく変わりますので、設立費用とは別に登記費用を見積もり、移転時の税負担と法人化後の年間の負担を税理士に試算してもらってから、実行するかどうかを決めるのが確実です。
また、2024年4月1日から相続登記が義務になりました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければならず(不動産登記法76条の2第1項)、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(同法164条1項)。親の不動産を会社に持たせたい場合、会社は相続人にはなれませんので、相続人が相続登記をしたうえで会社へ売買などで移す、という2段階の手続きが基本です。遺言で会社に遺贈する方法もありますが、その場合の登記手続きと税負担は、遺言を作る前に司法書士と税理士に確認してください。
税理士に相談する論点
どの程度の所得があれば法人化が有利になるか、役員報酬をいくらにするか、設立当初の消費税の納税義務がどうなるか(資本金1,000万円未満かどうかだけでは決まらず、インボイス登録の有無なども関わります。消費税法12条の2)といった判断は、赤字でも法人住民税の均等割がかかることや毎年の決算・申告の費用も含めて、税理士の専門分野です。設立前に一度は試算してもらうことをおすすめしており、当事務所から法人化に慣れた税理士をご紹介することもできます。
ご依頼の流れ
- お問い合わせ(フォームから)と、初回リモート面談・ヒアリング(30分無料)
- ご依頼・ご契約、類似商号の調査、会社実印の作成
- 定款の作成と、ご捺印書類一式の発送・ご返送(株式会社は公証人の定款認証まで当事務所が行います)
- 資本金の払込みと登記費用のお振込み、登記申請
- 登記完了後の登記簿謄本(登記事項証明書)の取得と、完了書類一式の発送
登記の申請から完了までは、管轄の法務局や時期にもよりますが1〜2週間程度が目安です。希望の設立日がある場合は、ご相談の際にお知らせください。
当事務所の特徴
代表司法書士が全ての手続きを担当しますので、担当者が変わって同じ説明を繰り返していただくことがなく、スピーディーに対応できます。ご連絡はメール・電話のほか、ChatworkやSlackでのやり取りも可能です。マイナンバーカードと署名用電子証明書のパスワードをお持ちの方であれば、完全オンラインでの登記手続にも対応しています。
設立登記の料金
株式会社の設立は、資本金2,145万円未満の場合で294,800円〜329,800円(税込・実費込)、合同会社の設立は、資本金859万円未満の場合で184,800円(税込・実費込)です。登録免許税や定款認証手数料などの実費を含んだ金額です。市区町村の特定創業支援等事業による支援を受けた方は、要件を満たせば登録免許税が半額になる制度があり、その分お安くなります。初回のリモート相談(30分)は無料です。
株式会社の設立サービスの詳細は、こちらをご覧ください。
対象地域
日本全国対応可能です!郵送やZoomを使用することで、直接面談することなく手続きを進められますので、関西圏以外の方からのご依頼でも別途交通費等の追加費用が生じることはございません。
よくある質問
司法書士からひと言
副業の収入が増えてきたのを機に合同会社をつくりたい、というご相談は珍しくありません。お話を伺うと、設立の費用は調べてこられていても、設立後に続く社会保険の手続きや、不動産を移すときの税金まではまだ見えていない、という方が多い印象です。つくった後に何が続くのかを設立前に一度整理しておくと、後戻りがなくなります。本業を持ちながら会社をつくる方が、設立の手間を最小限にして本来の目的に集中できるよう、登記の側からお支えします。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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