会社をつくろうと調べはじめると、最初に突き当たるのが「合同会社と株式会社、どちらにするか」という問いではないでしょうか。結論から申し上げると、分かれ目は設立費用ではなく、外から出資を受けたり会社を売ったりする可能性があるかどうかです。その可能性があるなら株式会社を選んでおくほうが後の手間は少なく、当面ないのであれば合同会社が有力な選択肢になります。本ブログでは、合同会社と株式会社の違いについて、わかりやすく説明します。

合同会社とは
合同会社とは、出資した人の全員が有限責任社員である、持分会社と呼ばれる種類の会社です(会社法575条1項・576条4項)。2006年5月1日に会社法が施行されたときに新しくつくられた会社の形で、それまでの有限会社に代わるものとして紹介されることがありますが、制度としては別のものです。
ひとつだけ先にお伝えしておきたい言葉があります。合同会社では、出資した人のことを「社員」と呼びます。従業員という意味ではありません。株式会社の株主にあたる人が社員で、原則としてその社員全員が会社の業務を執行します(会社法590条1項)。従業員を雇うこともできますが、雇われたことだけで会社法上の社員になるわけではありません。
合同会社と株式会社の違いは細かく挙げればきりがありませんが、これから会社をつくる場面で効いてくるのは、出資した人と経営する人の関係、物事の決め方、そして費用と設立後に続く手間の3つです。
違い1|お金を出す人と、経営する人の関係
株式会社では、お金を出す人(株主)と、会社を経営する人(取締役)が制度としてはじめから分かれています。株主は株主総会で取締役を選び(会社法329条1項)、選ばれた取締役が日々の経営にあたります。同じ人が株主と取締役を兼ねることもできますが、分けることもできる、というのが大事なところです。
合同会社では、社員が原則として全員で業務を執行します(会社法590条1項)。ただし、定款で業務を執行する社員を決めておけば、経営を担当する社員と、出資だけをする社員に分けることもできます(会社法591条1項)。「合同会社では経営に関わらない出資者を迎えられない」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。

では何が違うのかというと、その持分をあとから動かすときの手間です。合同会社の持分は、原則として他の社員全員の承諾がなければ譲渡できません(会社法585条1項)。株式のように小口に分けて第三者へ渡していく仕組みもありません。出資する人がこの先入れ替わっていく前提の会社なら、株式会社のほうが素直に回ります。
違い2|物事をどう決めるか
もうひとつの違いは、会社として何かを決めるときの「声の大きさ」です。
株式会社の議決権は、原則として持っている株式の数で決まります(会社法308条1項)。普通の決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席したうえで、出席した株主の議決権の過半数で成立します(会社法309条1項)。同じ条件で株式を引き受けた人が2人いて、一方が90株、他方が10株を持っているなら、10株の人が反対しても、90株の人の賛成で決議は成立します。
合同会社は違います。業務の決定は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の頭数の過半数で行います(会社法590条2項)。定款で業務を執行する社員を決めている場合は、その社員の過半数です(会社法591条1項)。出資の額が90万円でも10万円でも、頭数としては1対1ですから、2人の会社で意見が割れると決まりません。ただし、日常的な業務には各自で決められるものもあり、すべての判断に多数決が必要なわけではありません(会社法590条3項)。

「合同会社は全員一致で決める」という説明を見かけますが、これも言い過ぎです。全員の同意が必要になるのは、定款を変更するとき(会社法637条)や、社員が持分を他人に譲るとき(会社法585条1項)といった、会社の土台に関わる場面です。しかも、業務を執行しない有限責任社員の持分は業務執行社員全員の承諾で譲渡でき、定款で別の定めを置くこともできます(会社法585条2項・4項)。
裏を返せば、合同会社の決め方は定款でかなり自由に設計できるということです。複数人で出資するのであれば、誰が業務を執行するか、意見が割れたときにどう決めるか、持分を譲るときに誰の承諾を必要とするか。この3つは、設立の前に決めておきたいところです。
違い3|費用と、設立後に続く手間
設立のときにかかる実費で差が出るのは、登録免許税と定款認証手数料の2つだけです。
設立登記の登録免許税は、株式会社が資本金の額の0.7%で最低15万円、合同会社が同じく0.7%で最低6万円です(登録免許税法別表第一24号(1)イ・ハ)。資本金が100万円なら計算上は7,000円ですが、最低額が適用されるため、株式会社は15万円、合同会社は6万円になります。
これに加えて、株式会社では公証人による定款の認証が必要です(会社法30条1項)。手数料は資本金の額に応じて3万円・4万円・5万円の3段階ですが(公証人手数料令35条)、2024年12月1日からは、資本金100万円未満で、発起人が全員個人で3人以下、定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載があり、取締役会を置かない、という条件をすべて満たすと1万5,000円に下がりました。ひとりで小さく始める会社は、この条件に当てはまることが多いはずです。
合同会社の定款には、この認証の定めがありません。紙で作るなら社員になろうとする人が全員で署名または記名押印し(会社法575条1項)、電子定款で作ることもできます(同条2項)。会社が成立するのは定款を作った時点ではなく、本店の所在地で設立の登記をしたときです(会社法579条)。
登録免許税がどちらも最低額になり、軽減措置を使わない場合で比べると、設立時の実費の差は10万5,000円から14万円ほどです。資本金が大きくなれば税額の差も変わります。紙の定款につく4万円の収入印紙は、電子定款にすればどちらの形でも不要になります。

差は設立のときだけではありません。設立後に続く手間にも違いがあります。
| 株式会社 | 合同会社 | |
|---|---|---|
| 取締役・業務執行社員の任期 | 取締役は原則2年。非公開会社では、監査等委員会設置会社などを除き、定款で最長10年まで伸ばせる(会社法332条1項・2項) | 法定の任期はない |
| 決算の公告 | 定時株主総会の終結後に必要(会社法440条1項) | 不要 |
| 代表者の住所 | 登記はされるが、要件を満たせば登記事項証明書などでの表示を市区町村までにとどめられる(商業登記規則31条の3) | 代表社員の氏名と住所が登記される(会社法914条7号)。表示をとどめる制度は使えない |
| 出資した人が亡くなったとき | 株式は相続人に承継される | 定款に定めがなければ退社となり、持分は払い戻される(会社法607条1項3号・608条1項) |
任期がないことは、合同会社のわかりやすい長所です。株式会社は、顔ぶれが変わっていなくても任期が満了するたびに役員変更の登記が必要で、そのままにしていると過料の対象になります。長く放置された会社が職権で解散させられる「みなし解散」の対象にもなりません。もっとも、合同会社でも、業務執行社員や代表社員が変わったとき、代表社員の住所が変わったとき、本店や商号を変えたときには登記が必要です。
会社の形を変えても、変わらないこと
違いばかり見ていると別の乗り物のように思えてきますが、同じところも多くあります。
株式会社の株主も合同会社の社員も、原則として、出資したお金とは別に会社の借金を返す義務を負いません(会社法104条、580条2項)。合同会社では、設立の登記までに出資を全額払い込むことが前提になっています(会社法578条)。ただし、社長個人が会社の借入れを保証した場合の責任は、これとは別の話です。
税金の扱いも、どちらも法人として課税される点は同じです。「合同会社にすると税金が安くなる」という説明を見かけることがありますが、会社の形を選ぶだけで税負担が軽くなるとは限りません。税額の見通しや役員報酬の決め方は、事業の計画に合わせて税理士にご確認ください。人を雇わず代表者ひとりでも、報酬を受けて常時業務にあたるなら健康保険と厚生年金の適用事業所になる点も、どちらも同じです。
合同会社を選ぶ前に、確かめておきたい3つのこと
費用の安さだけで合同会社を選ぶと、あとから困ることがあります。実務でよくお伝えしているのは次の3つです。
ひとつ目は、外からの出資・株式上場・会社の売却です。株式上場は、経営に加わらない一般の投資家へ株式を売り出す仕組みですから、株式会社でなければできません。出資を受けることも会社を売ることも合同会社でできますが、持分を動かすたびに他の社員の承諾が必要で、株式のように「1株いくらで何株」という形で値段をつけて取引する慣行もありません。出資する側が株式会社であることを前提にしていることも多く、結果として手続きの負担は大きくなります。
ふたつ目は、社員が亡くなったときです。株式会社の株式は相続人に承継されますが、合同会社の持分は、定款に承継の定めがなければ相続されず、その社員は退社したものとして扱われます(会社法607条1項3号)。社員がひとりだけの合同会社でこれが起きると、会社に社員がいなくなり解散に向かいます。定款には相続人が持分を承継する旨を定められますが(会社法608条1項)、相続人が複数になる場合もありますので、承継したあとに誰が経営を担うのかまで考えておきたいところです。
みっつ目は、代表者の住所です。株式会社では、要件を満たせば代表取締役等の住所の表示を登記事項証明書などで市区町村までにとどめられますが(商業登記規則31条の3)、この制度は株式会社の代表取締役等が対象で、合同会社の代表社員には使えません。なお、この措置で非表示になるのは代表者個人の住所であって、本店の所在地ではありません。自宅を本店にする場合は、この2つを分けて考える必要があります。
それでも合同会社が向いているのは
出資する人と経営を担当する人が同じで、少人数のまま事業を続ける見通しなら、合同会社は十分に機能します。設立時の実費が抑えられ、任期に伴う登記を繰り返さずに済むのは、そのまま日々の負担の軽さになります。名前の知られた外資系企業の日本法人が合同会社であることも珍しくありません。
迷ったときの決め方
材料が多くて決めきれないときは、次の4つを順に確かめてみてください。将来の株式上場を視野に入れているか。M&Aでの売却を考えているか。経営に加わらない出資者を、これから増やしていく予定があるか。取引先や金融機関から株式会社であることを求められているか。
ひとつでも「はい」があれば株式会社にしておくほうが無難です。4つとも「いいえ」なら合同会社が有力な選択肢になります。ただし、複数人で出資するのであれば、意見が割れたときの決め方と、誰かが抜けるときや亡くなったときの持分の扱いを、定款で決めてから設立してください。
あとから株式会社に変えることもできる
合同会社でつくったあとに株式会社へ変えることもできます。法律上は「組織変更」といい、実際にご依頼をいただくこともある手続きです。ただし、債権者が異議を述べられる期間を1か月以上設ける必要があり、これに定款などの書類の準備、公告の手配、登記の手続きが加わります。変更したい日から逆算して日程を組む手続きだとお考えください。
「とりあえず合同会社で始めて、必要になったら変えればいい」という考え方は間違いではありませんが、変えるときの費用と時間まで含めて比べておくと、判断がぶれません。手続きの詳細は「合同会社の株式会社化の登記とは?」で説明しています。
設立登記のご依頼について
設立の登記は、ご自身で申請することもできます。ひとりで出資し、ひとりで経営する会社であれば、法務局の様式に沿って進められる方も少なくありません。複数人で出資する場合、出資だけをする人を入れる場合、亡くなったときの承継まで決めておきたい場合は、書類を作り始める前に定款の内容からご相談ください。
当事務所では、ご相談から完了まで代表司法書士がすべてのやり取りを担当します。郵送とZoomで進められますので、日本全国から来所不要でご依頼いただけます。関西圏以外の方でも交通費などの追加費用はいただきません。完全オンラインでの設立登記にも対応しています。
| 報酬・実費込みの総額 | |
|---|---|
| 合同会社の設立登記(資本金859万円未満) | 184,800円(税込) |
| 株式会社の設立登記(資本金2,145万円未満) | 294,800円〜329,800円(税込) |
登録免許税などの実費と会社印の費用を含んだ総額です。現物出資がある場合や、出資者に法人・海外にお住まいの方が含まれる場合は別途お見積りします。ご依頼に含まれる業務の範囲、手続きの流れ、特定創業支援等事業による登録免許税の軽減については、「合同会社の設立登記」と「株式会社の設立登記」のページをご覧ください。
よくある質問
司法書士からひと言
「設立の費用は抑えたいけれど、あとで困らないか」というご相談は珍しくありません。複数人で出資されるのであれば、意見が割れたときに誰が決めるのか、誰かが抜けたいと言ったときに持分をどうするのかを、定款の文言にするところまで一緒に確認したいと思います。おひとりで始められる場合も、万一のときに誰へ事業を引き継ぐのかは設立時の定款に関わります。会社の形に迷っている段階からご相談いただければ、登記の側から整理をお手伝いします。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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