在留資格「経営・管理」の資本金要件が3,000万円以上に引き上げられ、要件に合わせて増資をしたいというご相談は珍しくありません。金銭で募集株式を発行する場合、原則として払込期日から2週間以内に資本金の額の変更登記が必要で(会社法915条1項)、登録免許税は増加した資本金の額の1,000分の7(最低3万円)です。ここで見られるのは登記簿に記載される「資本金の額」ですから、払込額の一部を資本準備金に回すのであれば、増資後の資本金が3,000万円以上になるように計上額を決めることになります。本ブログでは、「経営・管理」の資本金要件に合わせた増資の登記について、期限と費用を中心にわかりやすく説明します。
「経営・管理」の資本金要件とは
在留資格「経営・管理」の許可基準は、2025年10月16日施行の省令改正で大きく変わりました。事業の規模は、それまで「2人以上の常勤職員」か「資本金の額または出資の総額が500万円以上」のどちらかで足りたところ、常勤職員1人以上と資本金3,000万円以上の両方が求められるようになりました。あわせて、日本語能力(申請者または常勤職員のいずれか)と、学位または3年以上の経営・管理の経験も要件です。
出入国在留管理庁の資料では、この「資本金の額」は株式会社であれば払込済資本の額、つまり登記簿に記載される資本金の額を指すとされています(会社法911条3項5号)。すでに「経営・管理」で在留している方は、施行日から3年を経過する日(2028年10月16日)までの更新申請であれば、基準に適合していなくても経営状況や適合の見込みを踏まえて許否が判断されますが、それ以降は適合が必要とされています。
増資の登記でやること
よく使われるのは、経営者本人や親族などに株式を引き受けてもらう募集株式の発行です。非公開会社(株式の譲渡に会社の承認が必要な会社)で引受人が総数をまとめて引き受ける場合の流れは次のとおりです。
- 発行可能株式総数の枠を確かめ、株主総会の特別決議で募集株式の数・払込金額・払込期日・増加する資本金の額などの募集事項を決める(会社法199条1項・2項、309条2項5号)
- 引受人と総数引受契約を結び、譲渡制限株式であれば取締役会(設置していない会社では株主総会の特別決議)で契約の承認を受ける(会社法205条1項・2項)
- 払込期日を定めた場合はその日に、払込期間を定めた場合はその期間内に、指定した払込取扱場所へ全額を払い込む(会社法208条1項)
- 払込み後、必要書類を添えて本店所在地を管轄する法務局へ変更登記を申請する
在留期間更新許可申請で資本金の額を明らかにする資料になるのは、登記完了後の登記事項証明書です。なお在留資格の申請自体は行政書士や弁護士の業務ですので、当事務所は登記の部分を担当します。
期限と費用
変更登記は原則として変更の日から2週間以内に申請します(会社法915条1項)。払込期日を定めた場合はその期日が変更の日にあたり、払込期間を定めた場合は末日から2週間以内にまとめて申請できます(同条2項)。期限を過ぎても登記は受け付けてもらえますが、100万円以下の過料の対象になりうるため(会社法976条1号)、日程が決まった時点で準備を始めます。
登録免許税は増加した資本金の額に1,000分の7を掛けた金額で、3万円に満たないときは3万円です(登録免許税法別表第一24号(1)ニ)。計算例は次のとおりです。
| 増資前の資本金 | 増加する資本金の額 | 登録免許税 |
|---|---|---|
| 500万円 | 2,500万円 | 17万5,000円 |
| 1,000万円 | 2,000万円 | 14万円 |
| 100万円 | 2,900万円 | 20万3,000円 |
このほかに登記事項証明書の手数料と司法書士報酬がかかります。増資で法人住民税の均等割など税負担が変わる場合がありますので、計上額を決める前に顧問税理士にも確認してください。
増資後の資本金が3,000万円以上になるように計上する
通常の増資では、払込みに係る額の2分の1を超えない範囲であれば、資本金ではなく資本準備金として計上できます(会社法445条2項・3項)。登録免許税は資本金に計上した額を基準に計算されるため、払込額の半分だけを資本金にして税額を抑えるやり方が広く使われます。
資本準備金への計上そのものが禁じられているわけではありませんが、資本準備金は登記簿の資本金の額に含まれません。現在の資本金と今回資本金に計上する額の合計が3,000万円以上になるように決める必要があり、現在の資本金が500万円で2,500万円を払い込むのであれば、その全額を資本金に計上することになります。登記申請には内訳を記載した「資本金の額の計上に関する証明書」を添付しますので(商業登記規則61条9項)、払込みの前に確定させておきます。
資金の出所を示す書類は手元に残しておく
登記では、会社名義の口座への入金が分かる通帳のコピーなどを綴じ込んだ、払込みがあったことを証する書面を提出します(商業登記法56条2号)。一方で在留資格の審査では、その資金をどう用意したのかが確認されますので、不動産を売却した代金を充てた、役員報酬を貯めた預金から出したといった説明ができる資料を、登記とは別に保管しておきます。
原本還付を受けられる書類は、所定の手続きをすれば手元に残せます(原本還付については、こちらで説明しています)。委任状など登記申請のためだけに作成した書類は対象外ですので、在留資格の申請でも使う資料は提出前に確かめておくと安心です。なお借入金を出資に充てること自体は直ちに仮装払込みになりませんが、実際の出資がないのに払込みを装った場合、引受人は仮装した払込金額の全額を支払う義務を負い(会社法213条の2)、関与した取締役等も責任を負うことがあります(同法213条の3)。
必要になる書類
総数引受契約により金銭で増資する場合、登記申請に必要な書類は次のとおりです。
- 株主総会議事録(募集事項を決定する特別決議。会社法199条2項、309条2項5号)
- 総数引受契約書(引受人が募集株式の総数を引き受ける場合。会社法205条1項)
- 総数引受契約の承認を証する書面(譲渡制限株式の場合。会社法205条2項)
- 払込みがあったことを証する書面(会社名義の口座の通帳の写しなど。商業登記法56条2号)
- 資本金の額の計上に関する証明書(商業登記規則61条9項)
- 株主リスト(商業登記規則61条3項)
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
あわせて確認したいのが事業所の扱いです。改正後は自宅を事業所と兼ねることが原則として認められないとされていますので、事業所を移すときは本店所在地も変更するかを確かめ、変更するなら本店移転の登記も申請します(会社法911条3項3号)。
よくある質問
司法書士からひと言
在留資格の更新に合わせた増資では、登記の申請日だけでなく、登記事項証明書を取得する日から逆算して段取りを組みます。登記そのものは書類が揃えば短期間で終わりますが、その前段にある資金の準備と、資金の出所を説明できる状態を作るところに長い時間がかかります。当事務所では、在留資格の申請を担当されるVISA専門の行政書士の先生と日程を共有しながら、増資の決議から登記まで進めまることが可能です。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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