取引先や銀行から「会社の登記簿を出してください」と言われたとき、法務局で取る登記事項証明書と、インターネットで見られる登記情報提供サービスの登記情報のどちらを出せばよいか迷ったことはありませんか。結論から言うと、登記事項証明書は法務局(登記官)が認証文と職印を付けて発行する公的な証明書であるのに対し、登記情報は指定法人が運営するサービスでインターネットから即時に見られる非公式の写しであり、証明書としては使えません。本ブログでは、登記事項証明書と登記情報の違いと、場面に応じた使い分けについて、わかりやすく説明します。
登記事項証明書とは
登記事項証明書とは、法務局の登記官が登記記録の内容を証明するために、認証文と職印を付けて発行する公的な証明書です(商業登記法10条1項)。「登記簿謄本」と呼ばれることもありますが、コンピュータ化された現在の登記記録から発行されるものは正式には登記事項証明書といいます。誰でも手数料を納めれば請求でき、窓口・郵送・オンライン請求のいずれの方法でも取得できます。認証文がついているからこそ、銀行や取引先、官公庁への提出書類として通用します。
登記情報(登記情報提供サービス)とは
登記情報とは、一般財団法人民事法務協会が国の指定を受けて運営する「登記情報提供サービス」を通じて、インターネット上で確認できる登記記録の写しです。会員登録またはクレジットカード決済で申し込めば、パソコンやスマートフォンからその場でPDFを取得でき、法務局の窓口に行く必要も郵送を待つ必要もありません。ただし表示・印刷されるPDFには認証文も登記官印もなく、あくまで内容を確認するための写しにとどまります。契約書や登記申請の添付書類として登記情報のPDFを提出することはできません。
登記事項証明書と登記情報の違いを表で比較
両者の違いをまとめると、次のとおりです。
| 項目 | 登記事項証明書 | 登記情報 |
|---|---|---|
| 発行元 | 法務局(登記官) | 登記情報提供サービス(民事法務協会) |
| 法的性質 | 認証文・登記官印つきの公的証明書 | 証明書ではない、確認用の写し |
| 取得方法 | 窓口・郵送・オンライン請求 | インターネットで即時にPDF取得 |
| 手数料(1件) | 窓口600円/オンライン請求・郵送520円/オンライン請求・窓口受取490円 | 全部事項情報330円 |
| 受け取りまでの時間 | 郵送は数日、オンライン請求の窓口受取でも当日〜翌日 | 即時(数十秒〜数分) |
| 主な用途 | 銀行融資、許認可申請、取引先への提出、登記申請の添付書類 | 社内確認、契約前の相手方調査、取引先の信用チェック |
手数料だけを見れば登記情報のほうが安く、しかも即時に手に入ります。それでも登記事項証明書がなくならないのは、認証文がついた「公的な証明書」でなければ受け付けてもらえない場面が実務では多いからです。
履歴事項全部証明書・現在事項全部証明書・閉鎖事項証明書の違い
登記事項証明書には、記載される時期の範囲によっていくつかの種類があります。現在事項全部証明書は、現時点で有効な登記事項だけを記載したもので、いま誰が代表者かをシンプルに確認したいときに向いています。履歴事項全部証明書は、現在の登記事項に加えて、請求日の3年前の1月1日以降に変更・抹消された事項もあわせて記載され、役員の変遷や商号変更の経緯まで確認できるため、銀行融資や補助金申請などで実務上もっともよく求められる種類です。
閉鎖事項証明書は、本店移転や合併、解散・清算結了などで登記記録そのものが閉鎖された場合に、その閉鎖前の内容を証明するものです。履歴事項証明書には載らない古い沿革を確認したいときに使います。
取引先・銀行・許認可には証明書、社内確認には登記情報
新規の取引先を審査するとき、銀行融資の申込みをするとき、建設業や宅建業などの許認可を申請するときは、原則として、いずれも認証文つきの登記事項証明書でなければ受け付けてもらえません。一方で、契約前に相手方の商号や本店、代表者の氏名を自分の会社で確認したいだけであれば、登記情報で十分です。安く即時に取れる登記情報を日常のチェックに使い、対外的に提出する場面では登記事項証明書に切り替える、という住み分けが実務的だと思います。
会社法人等番号があるとオンライン請求が速い
登記事項証明書も登記情報も、請求のたびに商号や本店所在地を入力して会社を特定する必要がありますが、12桁の会社法人等番号がわかっていれば、その番号を入力するだけで一意に会社を特定でき、オンライン請求の手間がぐっと減ります。会社法人等番号と、国税庁が指定する13桁の法人番号は似ているようで別の番号です。両者の違いについては、別記事で詳しく説明していますのであわせてご覧ください。
登記申請中は取得できないことがある
役員変更や本店移転などの登記を申請している最中は、その会社の登記事項証明書も登記情報も、申請の処理が終わるまで取得できない期間が生じます。取引先から急に証明書の提出を求められたタイミングと、自社の登記申請中が重なると慌てることになるので、登記申請中にできなくなることについても別記事でまとめています。あわせてご確認ください。
よくある質問
司法書士からひと言
取引先から「証明書をください」と言われて、登記情報提供サービスのPDFをそのまま送ってしまい、あとで法務局の証明書を取り直すことになった、というケースは珍しくありません。急いでいるときほど、登記情報の手軽さに頼りたくなる気持ちはよくわかります。ただ、提出先が求めているのが「内容の確認」なのか「公的な証明」なのかを先に確認しておくだけで、二度手間はほとんど防げます。迷ったときは、提出先に「登記事項証明書(履歴事項全部証明書)でよいか」を一言確認してから請求することをおすすめします。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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