「会社法違反事件」という手紙が届いたらどうしたらいい?会社の過料とは?

ある日、突然「会社法違反事件」と書かれた封筒が社長の自宅に届くことがあります。通常、代表取締役個人には心当たりがないため、そのまま放置してしまいそうになることもあるでしょう。
しかし、それは、ここから述べる「過料」の通知かもしれません。このブログでは、会社の登記事項が漏れている場合に課される「過料」について、わかりやすく解説していきます。

目次

そもそも過料とは?

会社法違反事件の過料とは、行政上の秩序罰であり、会社の代表取締役個人に科される秩序罰です。

秩序罰とは、行政上の秩序に障害を与える危険がある義務違反に対して科される金銭的制裁であり、比較的軽微な義務違反を想定して設けられています(櫻井敬子=橋本博之著「行政法〔第6 版〕」(弘文堂、2019)186頁)。主に次の場合に発生します。

 

  • 登記懈怠(会社法第976条第1号)

    目的・商号の変更や役員の選任など登記すべき事項が発生しているにも関わらず法定期間内にその登記申請を行わなかった場合
  • 選任懈怠(会社法第976条第22号)


    役員の任期が到来しているにも関わらず改選手続を行わなかった場合

過料の金額の上限は100万円で、懈怠の期間が長いほど高額になる傾向があります。もっとも、実務では登記期限の2週間を少し過ぎた程度で過料の通知が届くことはほとんどなく、通知が届くのは1年以上放置していたような場合が中心です。

過料については、所属しているBAMBOO INCUBATORで、あなまち司法書士事務所の佐藤大輔先生と対談した動画も撮影しています。あわせてご覧ください。

過料に対する異議が認められる場合がある?

 裁判所は、形式的な登記簿等の内容から過料を科すかの判断をしているため、必ずしもその判断が正しいとは限りません。そこで、この過料の決定に関しては異議の申し立てを行うことができます。例えば、次のような場合があります。

(1)選任や登記を「懈怠けたい」していない場合。

会社の役員の任期は到来していたが、株主間に対立が生じており、株主総会を開催することができなかったため、役員の改選が行うことができなかった。

株主間に対立があったという事情だけで、選任懈怠に当たらないとは限りません。選任に向けてどのような手続きを取ったか、なぜ決議に至らなかったかを資料とともに説明し、裁判所の判断を受けることになります。

裁判所は、過料決定の通知を行うにあたって、役員の選任を行うことができなかった事情等を把握していない場合もあり、このような場合には、異議を申し立てることで過料そのものを支払わなくてもよくなることもあります。

(2)選任や登記を懈怠けたいしているが、裁判所が判断した事実が誤っている場合

会社の役員の任期を定款で伸長して10年にして、任期を2024年(令和6年)までとしていたところ、裁判所からの過料の決定の通知がきたが、裁判所は役員の任期を2016年(平成28年)までと判断して過料の決定を行っていた。

 上記の事例の場合は、役員の選任の懈怠けたいはしているため、過料は科されることになります。一方で、選任を懈怠けたいした期間については、裁判所が誤って8年長く判断してしまっています。

 この場合、懈怠けたいの期間が長い程、過料の金額は高額になるため、異議を申し立てることで過料の金額が減額される可能性があります。

 本事例の場合は、異議を申し立てることによって過料の金額は10万円から4万円に減額されました。

 なお、異議の申し立ては、記載した事例のような理由がある場合には認められますが、単に「手続きしなければならないことを知らなかった。」、「依頼していた司法書士等のミスで遅れてしまった。」というような場合には認められません。

ちなみに、異議申立書の雛形は裁判所から公開されており、下記のとおりとなっています。

この雛形を適宜、会社のケースに応じて記入することで自社でも対応できるのではないかとお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、具体的なケースでは、この別紙に、裁判所を納得させられるだけの内容を論理的に記述する必要があり、自社で対応する場合も、異議の理由と裏づけ資料を整理する必要があります。

異議申立ての流れ

裁判所に対する異議の申立を弊所にご依頼いただいた場合の流れは、次のとおりです。

STEP
過料決定を受けとる(非訟事件手続法第122条第1項)

裁判所から、通常は普通郵便で郵送されてきます。通知書は、会社代表取締役の個人の自宅へ届きます。

STEP
初回面談・ヒアリング

初回のリモート面談(30分)の費用は、無料です。
・初回相談にあたりましては、次の3点の資料のご準備をお願いいたします。

 1 過料決定のお手紙
 2 御社の定款
 3 御社の代表者様の本人確認資料(運転免許証やマイナンバーカードなど)

異議を申し立てることができる期間は、1週間と非常に短いため、受け取り次第すぐにご相談ください
ご相談時までに、あわせて受けとられた決定書のデータをFAXまたはメールにてご提供いただきましたら、スムーズに手続が進みます。

STEP
着手金のお支払い

着手金として「2万2,000円(税込)」を、弊所指定の口座へ、お振込にてお支払いいただきます。

STEP
異議申立書の作成

わたくしが異議申立書を作成します。

STEP
異議申立書への押印

お客様にて、内容ご確認の上、異議申立書への押印をいただきます。

STEP
異議申立書の提出(非訟事件手続法第122条第2項)

司法書士が異議申立書を管轄裁判所に提出します。

代表取締役様が、過料決定の郵便を受けとった日から1週間以内に、この提出まで終える必要があります。

提出期限が迫っていることが多く、通常、持参により裁判所へ提出します。

STEP
異議申立に関する決定(非訟事件手続法第122条第5項又は第6項)

異議申立してから、数ヶ月後に、裁判所から異議申立を認め減額対応するかどうかの手紙が届きます。

STEP
司法書士との費用精算・過料のお支払い

報酬・実費の総額から着手金を控除して、その残額をお支払いいただきます。

過料が確定した場合の納付は、検察庁から届く納付告知書の案内に従って行います。

STEP
懈怠していた会社登記の申請

過料を支払っただけでは、登記の申請義務が免除されるわけではありません。懈怠していた登記を申請することになります。
*懈怠登記の申請には、別途、その登記に関する報酬及び実費がかかります。

先に登記申請を完了させ、その受領書とともに異議を申し立てた方が良い場合もあります。個別のケースに応じて、対応させていただきます。

報酬及び費用

異議申立により減額された金額の半額を報酬とし、それに実費を加えた金額から着手金2万2,000円(税込)を控除した残額を、異議申立により減額された決定書を受領した後のタイミングで申し受けます。

報酬の計算例として、受けとった過料の決定額が10万円の場合には、ご依頼の段階で着手金として2万2,000円(税込)を頂戴し、異議の結果2万円に減額された場合には、減額された8万円の半額の4万円(税込4万4,000円)が報酬となり、着手金を差し引いた2万2,000円(税込)+実費をお支払いいただきます。

よくある質問

登記の申請は、法務局に対して行うものなのに、なぜ裁判所から過料の手紙が届くのですか?

登記官は、登記懈怠や役員選任懈怠があることを職務上知ったときは、裁判所に通知することになっています(商業登記規則第118条)。この通知を受けた会社について、裁判所は検察官の意見も聴取した上で、過料の決定をするか否かを決めます(非訟事件手続法第120条第2項、同法第122条第1項)

なお、登記官は、役員変更登記を申請しその申請内容から登記懈怠であることが明らかである場合を除いて、選任懈怠であるとみなして裁判所に過料の通知をする、とされています(平成27年9月7日法務省民商第104号民事局長通達)

「会社法違反事件」という名前の封筒が届き、その法律違反に対するペナルティが過料だということはわかりました。法律違反だということは、そのペナルティが科された場合、前科がついてしまうのでしょうか?

過料は、法令違反に対する行政処分の一環として科される行政罰であり、刑法上の罪に関する刑事罰ではありませんので、前科がつくことはありません。

よって、過料に科せられて、これを支払わなかったとしても、労役場に留置(刑法 18条)されることはありません。 なお、過料に科せられて、これを支払わなかったら、財産に対して強制執行されることがあります(非訟事件手続法121条)。

当社は、新しく始まった代表取締役の住所非表示措置を行っている会社です。この制度を用いて、代表取締役個人の住所を登記簿から隠している場合でも、裁判所からの手紙は、代表個人の自宅に届くのですか?

住所非表示措置は、登記事項証明書等に表示される住所の一部を非表示にする制度で、登記記録から住所を削除するものではありません。この措置によって裁判所からの通知を受けなくなるわけではありません。届いた通知書に記載された宛先・連絡先を確認し、期限内に対応してください。

*代表取締役の住所非表示措置の詳細については、こちらをご覧下さい。

当会社は、長期間、会社登記を申請していなかったため、「みなし解散」の手続がとられてしまい、それから会社継続の登記を行いました。この場合にも、過料は発生するのでしょうか?

みなし解散の通知書が来たときは、事業を廃止していない旨の届出書を提出しても、会社が継続するものとして役員変更登記を申請しても、どちらの場合も、過去の登記懈怠等について過料の対象になり得ます。

これに対し、 全く何も対応をせずにみなし解散がされ、その後登記記録が閉鎖された場合は、登記官から裁判所へ過料の通知をしないこともあります。

同じ登記懈怠についての過料なのか、その後に新たな懈怠が生じたのかによって取扱いは異なります。届出書や過去の過料決定、今回申請する登記の内容を照らし合わせて確認します。

*みなし解散の詳細については、こちらをご覧下さい。
*会社継続の詳細については、こちらをご覧下さい。

この度、役員就任にあたってその会社の登記簿を確認したところ、どうやら長期間登記がされていない会社のようです。取締役であるわたしにも過料は課されるのでしょうか?

登記懈怠及び選任懈怠については、過料の対象は会社ではなく会社の代表取締役等の代表者です。よって、代表取締役ではない取締役は、過料の対象とはなりません(大決明治40年8月6日)

なお、代表取締役が複数存在する場合は、各代表取締役が登記懈怠の責任を負うとされている事案があります(東京高裁決定昭和56年5月28日)

新しく、長期間登記がされていない会社の代表取締役に就任することを打診されています。就任後に過料の決定がされた場合には、当時の代表取締役ではなく、わたしが過料を支払う必要があるのでしょうか?

懈怠されている登記事項発生後に代表取締役に就任しても、その就任から遅滞なく登記をする義務が課され、これを怠れば過料に処せられるとされた事例があります(大決大正5年6月30日新聞1163号32頁)

改めて調べたところ、わたしの会社では、取締役と監査役及び代表取締役のそれぞれを選任することがもれており、その登記を申請したら、本ブログに書いてる過料に処せられることになりそうです。この場合、それぞれの登記事項について、1つずつ過料が科されるのでしょうか?それとも、まとめて1つの過料が科されるのでしょうか?

過料は、刑法の併合罪の規定の適用又は準用がありません。よって、原則として、違反行為が数個ある場合には違反の数だけ過料が科されます(大決明治37年5月28日民録10輯746 頁)

しかし、取締役、監査役の選任及び代表取締役の選任による各変更登記を怠った場合、そのいずれも、同一の株主総会で選任した場合の変更については 1 個に数えられると考えられるが、代表取締役の選任が取締役会の決議によるものである場合には、別個の違反を構成するとされた事例があります(仙台高裁秋田支部決定昭和37年8月27日下民集13巻8号1734頁)

司法書士からひと言

過料の決定への異議の申立ては、過料決定を受け取った日から1週間以内に行う必要があります。迅速な対応を行う必要があることに加えて、過料決定の通知の内容を読んでも裁判所の判断が正しいかの判断を行うことは困難かもしれません。また、過料決定の判断が正しいかを判断するには、そもそも登記事項との関連性も考慮した上での判断が必要となるため、依頼先の士業としては、司法書士が最適であると考えます。

突然、過料決定の通知を受け取られた場合には、ぜひ、弊所までご相談いただけますと幸いです。


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この記事を書いた人

石本 憲史のアバター 石本 憲史 司法書士・スタートアップデザイナー®

大阪・北浜で「いしもと司法書士事務所(ISHIMOTO Legal)」を運営する司法書士です。
スタートアップの資金調達にともなう商業登記(種類株式・J-KISS・新株予約権・第三者割当増資)と、定款や株主間契約まわりの設計を専門にしています。
AIを日々の業務に組み込んでいる司法書士として、同業の士業向けにAI活用の顧問サービスやセミナーも行っています。
大阪司法書士会 東支部所属(登録番号 大阪第4973号)/簡裁訴訟代理等関係業務認定(第1201092号)
所属団体:BAMBOO INCUBATOR、smartroundパートナー

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