「不動産を持たせた資産管理会社で、自分が亡くなったら物件は家族の名義になるのでしょうか?」 株式会社の場合、会社名義の不動産や預金はオーナーの相続財産にならず、会社に残ります。家族が引き継ぐ株式と、会社を動かす役員の立場を分けて準備することが必要です。
株式会社の資産管理会社とは
資産管理会社とは、不動産や株式などの財産を会社で保有・管理するために設立した会社の呼び方です。会社法上の特別な会社類型ではありません。本ブログでは、資産管理会社を株式会社として設立している場合を扱います。
会社は、オーナー本人とは別の法人です(会社法3条)。株式をすべて1人で持ち、取締役も1人であったとしても、会社が持つ財産とその人個人の財産は区別します。
会社の種類が合同会社の場合は、社員の死亡と持分承継について別のルールがあります。「小さな資産管理会社だから同じ」と考えず、まず登記事項証明書で会社の種類を確認してください。
会社の不動産と預金は、会社に残る
たとえば、会社が賃貸マンションを所有し、家賃が会社の口座に入っているという仮の例で考えます。オーナーが亡くなっても、マンションの所有者は引き続き会社です。オーナーの死亡だけを理由に、そのマンションを配偶者や子どもの名義へ相続登記することはありません。
会社が借主である借入金も、引き続き会社の債務です。オーナー個人が借主なのか、会社の借入れを個人保証していたのかは、別に契約書で確認します。
一方、オーナーが個人名義の土地を会社に貸していた場合、その土地は個人の相続財産です。「会社で使っている物件」という呼び方だけでは、誰の財産か判断できません。土地と建物で所有者が違うこともあるので、不動産の登記事項証明書と契約書を見て整理します。
相続の対象は、株式と個人の財産
相続人が原則として承継するのは、亡くなった方の財産に属する権利義務です(民法896条)。資産管理会社との関係では、オーナーが所有する株式のほか、会社に貸していたお金も確認対象になります。
| 確認するもの | オーナー死亡後の基本的な扱い |
|---|---|
| 会社名義の不動産・預金 | 会社の財産として残る |
| オーナー個人が所有する自社株 | 個人の相続の対象となる |
| オーナーから会社への貸付金 | 個人が持つ貸付債権として相続の対象となる |
| 会社が借りているお金 | 原則として会社の債務のまま |
| オーナー個人の不動産や債務 | 個人の相続として確認する |
会社の決算書に「役員借入金」がある場合、会社から見ると借金ですが、社長から見ると会社に返してもらう権利です。株式とは別の財産なので、誰が承継するのか、返済条件はどうなっているのかを確認します。
ただし、科目名だけで実際の貸主や残高が確定するとは限りません。契約書や入出金の記録を、顧問税理士の先生が把握している決算資料と照合します。会社の財産の内容は自社株の評価にも関わりますが、具体的な評価や相続税の判断は税理士に確認してください。
株主を引き継ぐ人と、会社を経営する人を決める
自社株を相続することと、取締役になることは別です。オーナーが取締役でもあった場合、死亡によってその地位は終了し、家族が自動的に同じ役職を引き継ぐわけではありません(会社法330条、民法653条1号)。
後継者を取締役に選ぶには、原則として株主総会の決議と本人の就任承諾が必要です(会社法329条1項・330条)。代表取締役をどう決めるかは、取締役会の有無や定款によって変わります(同法349条・362条)。取締役が1人だけだった会社では、誰が株主として議決権を行使できるかの整理も急ぎたいところです。
株式の相続だけでは会社の変更登記は必要ありませんが、死亡による役員の退任や後任者の就任などには登記が必要です。登記事項の変更は、原則として変更の日から2週間以内に申請します(会社法915条1項)。
会社名義の預金はオーナー個人の相続預金とは区別されますが、代表者が不在のまま自由に使えるという意味ではありません。金融機関への届出や権限の確認を行い、新しい代表者が会社の支払いを進められる状態にします。
生前に、遺言と会社の資料をそろえておく
準備の入口として、誰に自社株を渡し、誰に会社の経営を担ってもらいたいかを考えます。複数の子どもに財産を残したい場合でも、株式を均等に分ける方法だけでなく、株式以外の財産と組み合わせる方法も検討できます。
遺言に会社名義のマンションを個人の財産として書くのではなく、自分が実際に持つ株式や貸付債権を把握して文案を作ります。家族への配分では遺留分も確認し、株式の評価や納税資金の見通しは顧問税理士の先生に相談してください。
家族の生活費として家賃を残したいときは、株式を渡すだけで希望に届くかも考えます。たとえば会社名義のマンションを貸し、家賃も会社が受け取っているなら、配偶者が全株式を相続しても、その家賃が当然に配偶者個人の収入へ切り替わるわけではありません。賃貸人も入金先も、会社と個人を分けて見ます。
「会社の不動産はこのまま保有したい」「配偶者の生活費も残したい」という希望があれば、個人の預金なども含めて遺言の配分を考えます。会社から個人へ資金を移す方法や税負担は、別に検討する事項です。家賃収入のある会社だから、家族の生活費も準備できているとは限りません。
記入例:会社の財産と個人の財産を分けるメモ
たとえば、資産管理会社がマンションを所有し、オーナーがその会社の株式と貸付債権を持つ場合です。遺言の検討用には、次のように分けて書き出します。
会社名義の財産:賃貸マンション〇〇、会社の預金口座
本人が所有する株式:株式会社〇〇の普通株式〇株
本人の会社に対する貸付債権:契約日〇年〇月〇日、残高〇円(確認日〇年〇月〇日)
本人名義で会社に貸している不動産:〇〇/該当なし
株式と貸付債権を渡したい相手:それぞれ氏名を記入
これは資料整理のメモで、財産を移す効力はありません。会社名義のマンションを、本人の遺言で家族に直接相続させる財産として記載しないよう、名義と契約を確認します。株式と貸付債権を同じ人に渡す場合も、別の人に渡す場合も、それぞれの条項を整えます。
よくある質問
司法書士からひと言
会社のマンションを子どもに残すつもりでも、遺言に書くべき財産は自社株かもしれません。物件の名義と、ご自身が会社に貸しているお金の有無を確かめると、文案に必要な情報が見えてきます。資産管理会社の株式を含む遺言や、相続後の役員変更登記についてご相談いただけます。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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