「相続人が妻と子2人なら、自社株も妻に半分、子に4分の1ずつ渡さないといけませんか?」。法定相続分があるからといって、すべての財産を同じ割合で細かく分けなければならないわけではありません。自社株を誰が取得するかは、遺言や遺産分割による配分を確認して考えます。
法定相続分とは
法定相続分とは、民法が定める相続分の割合です。配偶者と子が相続人になる場合は、それぞれ2分の1で、子が複数なら原則として子の分を均等に分けます(民法900条)。これは、個々の財産について誰がどれを取得するかを、そのまま決めるものではありません。
法律上の配偶者と血族がともに相続する場合の基本的な割合は、次のとおりです。
| 相続人の組合せ | 配偶者の法定相続分 | 血族側の法定相続分の合計 |
|---|---|---|
| 配偶者と子 | 2分の1 | 子が2分の1 |
| 配偶者と父母などの直系尊属 | 3分の2 | 直系尊属が3分の1 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 4分の3 | 兄弟姉妹が4分の1 |
この表は基本的な組合せです。代襲相続や、父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹がいる場合などは、個々の割合をさらに確認します。また、生前の贈与などによって、実際の分割で考慮する相続分が変わる場合もあります。
株式は、相続と同時に株数ごとに分かれない
説明のための仮例として、社長が普通株式1,000株を保有し、遺言がなく、妻と子2人が共同相続する場合を考えます。相続が始まると自動的に妻が500株、子が250株ずつを単独で取得する、ということではありません。
共同相続された株式は、分割まで相続人が共同で保有する準共有の状態になります。法定相続分はその持分を考える基準になりますが、各自が自由に売ったり議決権を使ったりできる株数が、その時点で切り分けられるわけではありません。
共有に属する株式について権利を行使するには、原則として権利行使者を1人決めて会社に通知します(会社法106条)。株主総会を開く場合の確認は「株主が亡くなったら、その株式の議決権は誰が使う?」で説明しています。
遺産分割では、財産全体の配分を考える
相続人全員が合意すれば、遺産分割で後継者に自社株をまとめ、ほかの相続人に預金や不動産などを配分することもできます(民法907条1項)。すべての財産をそれぞれ法定相続分に分ける方法だけではありません。
仮に、配分を考えるために合意した自社株の価額が2,000万円、個人の預金が2,000万円で、相続人が子2人だけだとします。後継者である子が自社株を取得し、もう1人の子が預金を取得する配分なら、財産の種類を分けながら、同じ価額を受け取る形を考えられます。
この数字は説明のための仮定で、株式の評価方法や税額を示すものではありません。実際にはほかの財産や債務、各人の事情も確認します。法定相続分と異なる価額の配分を全員で合意することも可能ですが、十分に内容を理解したうえで決めることが大切です。
「平等に分ける」の意味を確かめる
会社の承継では、財産価値をどう配分するかと、株主としての権限をどう配分するかが重なります。自社株を均等に分けると、会社の議決権も複数の人に分かれることがあります。家族全員が株主として経営に関わるのか、経営は後継者に任せるのかを、財産の配分と一緒に考えます。
後継者への株式集中を優先したい一方で、ほかの家族に渡す預金が足りない場合もあります。その場合には、後継者が自分の資金からほかの相続人に金銭を支払う代償分割なども選択肢になりますが、支払える資金の裏付けが必要です。
自社株の価額も、設立時の払込額や、資本金を株数で割った数字だけで決まるものではありません。顧問税理士の先生に評価と税務の確認をお願いし、家族間での配分の前提をそろえると、金額と経営体制の両方を検討しやすくなります。
話合いの「半分」は、金額ですか、株数ですか
「きょうだいで半分ずつでよい」。この合意から、持株数まで決まったと考えるのは早いかもしれません。財産全体の価額を半分ずつにする希望と、自社株そのものを半分ずつ持つ希望では、できあがる株主名簿が違います。
相続人が子2人だけという前の仮例なら、「自社株2,000万円を後継者、預金2,000万円をもう1人」と書けば、価額をそろえつつ、株式を分けない意図が伝わります。一方、「自社株の2分の1ずつを取得」とするなら、株主として関わる人も分かれます。家族が納得したのは金額なのか、株主になることなのか。協議書や遺言の文案にする前に、ここを言葉にしておくと、同じ「平等」で違う完成形を思い浮かべることを防げます。
遺言がある場合と、合意できない場合
遺言で相続分や具体的な財産の取得者が定められている場合には、まずその内容を確認します(民法902条等)。法定相続分だけを見て、遺言の指定をなかったこととして株式を分けることはできません。
遺言と遺留分の関係も、遺産分割で全員が合意して配分する話とは区別して考えます。配偶者や子などの遺留分が問題となる場合には、財産全体をもとに確認が必要です。遺留分の侵害に対する請求は、原則として侵害額に相当する金銭の支払を求めるもので、株式そのものが当然に戻る仕組みではありません(民法1046条1項)。後継者側の支払資金もあわせて考えます。
相続人間の話合いがまとまらないときは、家庭裁判所の遺産分割の手続が選択肢になります(民法907条2項)。「会社を継ぐのだから当然に全部もらえる」と一方で決めず、争いがある場合は弁護士へ相談し、会社の決議や登記についても必要な対応を分けて確認します。
よくある質問
司法書士からひと言
自社株を分ける前に、会社を継ぐ人へ株式を集め、ご家族には別の財産を残せるかを考えてみてください。生前の準備であれば、遺言の文案にするところからご相談いただけます。株主名簿に加えて、預金や個人名義の不動産が分かる資料もあると、配分の希望を伺いやすくなります。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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