一般社団法人として活動してきたが、事業が収益化してきたので株式会社にしたい、あるいは補助金の関係でNPO法人にしたい、というとき、法人の種類をそのまま変えることはできるのでしょうか? 一般社団法人を株式会社やNPO法人に変える組織変更の制度はなく、その逆に株式会社やNPO法人を一般社団法人に変えることもできません。別の種類の法人で事業を続けたいときは、新設または既存の法人へ事業と財産を移し、元の法人で活動を続けないなら解散・清算する流れになります。本ブログでは、一般社団法人の組織変更ができない理由と、現実的な進め方について、わかりやすく説明します。
組織変更とは
組織変更とは、法人格の同一性を保ったまま、法人の種類を変える手続きです。会社法では、株式会社と合同会社などの持分会社の間で組織変更ができると定められています(会社法2条26号)。この場合、会社は解散せず、契約や財産はそのまま引き継がれ、許認可も原則として維持されます。
一方、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」)には、一般社団法人を株式会社やNPO法人などの別の種類の法人に変える組織変更の規定がありません。株式会社を一般社団法人に変える規定も、会社法にも一般法人法にもありません。「法人の種類を変える」ことは法律に定めがある組み合わせでしかできないので、株式会社やNPO法人で事業を続けたい場合は、新設する法人または既存の法人へ事業を移す方法を検討し、元の一般社団法人で活動を続けない場合には解散・清算も進めることになります。
その前に、そもそも法人の種類を変える必要があるかを整理しておきます。一般社団法人のままでも利益を出す事業はでき、変える必要が生じるのは、利益を社員に分配したい場合や、利用したい補助金の対象法人に一般社団法人が含まれていない場合などです。補助金は制度ごとに対象となる法人の種類が違うので、募集要項で先に確認します。
合併でも株式会社やNPO法人にはなれない
合併で株式会社やNPO法人に生まれ変わる方法も、使えません。一般社団法人が合併できる相手は一般社団法人または一般財団法人に限られ(一般法人法242条1項)、一般社団法人どうしの合併では存続または新設する法人は一般社団法人、一般財団法人どうしなら一般財団法人でなければなりません(同243条1項)。一般社団法人と一般財団法人が合併する場合、基金を全額返還していない一般社団法人があるときは合併後の法人は一般社団法人になり(同243条2項)、基金を全額返還したうえで一般財団法人と合併する形なら、一般財団法人に変わることだけは可能です。
株式会社やNPO法人と一般社団法人が合併することは、法律上できません。NPO法人が合併できる相手も、他のNPO法人に限られています(特定非営利活動促進法33条)。公益社団法人は公益認定を受けた一般社団法人であって別の種類の法人ではないので、公益認定を受けることも、認定を返上(公益認定の取消しの申請)することも、法人の種類の変更にはあたりません。
| 変えたい先 | 組織変更 | 合併 | 現実的な方法 |
|---|---|---|---|
| 株式会社 | できない | できない | 新設または既存の株式会社へ事業と財産を移し、必要なら一般社団法人を解散・清算する |
| NPO法人 | できない | できない | NPO法人の設立認証を受けて設立し(または既存のNPO法人へ)事業を移し、必要なら解散・清算する |
| 一般財団法人 | できない | できる(一定の条件あり) | 一般財団法人との合併、または新設して事業を移す |
| 公益社団法人 | 種類の変更ではない | ― | 行政庁の公益認定を受ける |
現実的な進め方
別の種類の法人で事業を続けるときは、次の順番で進めるのが一般的です。
- 現在の定款と契約を確認し、許認可・補助金の扱いや財産移転の条件を関係先と整理する
- 事業の移転先となる法人を設立するか、既存の法人を移転先として決める
- 必要な決議(事業の全部の譲渡は社員総会の特別決議)や相手方の同意を整え、契約・雇用・財産の移転と許認可の手続きを進める
- 元の一般社団法人で活動を続けない場合は、社員総会の特別決議で解散し(一般法人法148条3号)、清算を結了させる
許認可や補助金は法人ごとに与えられているので、移転先の法人で新たに申請が必要か、届出や承認で足りるか、補助金で取得した財産の処分に条件がないかを、移転前に所管の窓口へ確認します。従業員の雇用契約や取引先との契約も、当然には引き継がれないため、個別に同意を得て切り替えます。
特に注意したいのが、一般社団法人の財産の行き先です。一般社団法人は、社員に剰余金や残余財産の分配を受ける権利を与える定款の定めが無効とされており(一般法人法11条2項)、解散後の残余財産の帰属先は定款の定め、定款で定まらなければ社員総会の決議、それでも定まらなければ国庫と決まっています(同239条)。非営利型法人として定款に「残余財産は国や地方公共団体などに帰属させる」と定めている法人では、定款で定めた帰属先以外に残余財産を渡すことはできず、株式会社に無償や低額で財産を移すと「特別の利益」にあたって非営利型の要件を欠くおそれがあります。
事業に使う財産の譲渡と、債務の弁済などを終えたあとに残る残余財産の処分は分けて考える必要があり、財産を時価で売却しても代金は元の法人に残り、清算後に残れば残余財産の帰属先のルールに従います。譲渡価格や税務上の扱いは、実行前に税理士と確認します。
NPO法人から一般社団法人に変えたい場合
NPO法人を一般社団法人に変えたいという相談も、同じ理由で組織変更はできません。さらにNPO法人では、定款で定められる残余財産の帰属先が、他のNPO法人、国や地方公共団体、公益社団法人や公益財団法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人に限られています(特定非営利活動促進法11条3項)。この中に一般社団法人は含まれていないので、NPO法人を解散して残った財産を、新しく作った一般社団法人に引き継ぐことはできません。
NPO法人の活動を一般社団法人で続けたい場合は、一般社団法人を設立して事業を移し、NPO法人の財産は定款で定めた帰属先に渡す形になります。残余財産として引き継げない前提で、設備や契約を解散前にどう扱うか(時価で譲渡するか、帰属先に渡すか)を決めておく必要があります。
よくある質問
司法書士からひと言
「法人の種類を変えたい」というご相談は、実際には「事業の移転先を決めて移す」手続きと「元の法人を残すか閉じるか」の判断の組み合わせになります。当事務所では、新法人の設立登記だけでなく、元の法人を残すか解散するかも含めて手続きの順序を整理します。まず現在の定款と、引き継ぎたい契約・財産の一覧をご用意いただき、許認可の窓口や税理士への確認事項を整理してから、事業を止めずに進められる日程を組みます。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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