一般社団法人の事務所を引っ越すとき、住所変更の登記だけをすればよいのでしょうか? 主たる事務所の移転には、法人内部での決定と、移転後の変更登記が必要です。定款に住所をどこまで書いているか、法務局の管轄が変わるかによって、手続きと費用が変わります。本ブログでは、一般社団法人の主たる事務所の移転登記について、わかりやすく説明します。
主たる事務所の移転登記とは
主たる事務所の移転登記とは、一般社団法人の主たる事務所を移したときに、登記記録の所在地を変更する手続きです。株式会社でいう本店移転に相当しますが、一般社団法人では「主たる事務所」という言葉を使います。
主たる事務所は登記事項であり、移転の日から原則2週間以内に登記を申請します(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律〔以下「一般法人法」〕301条2項3号、303条、304条)。賃貸借契約を結んだ日や引越しの予約日ではなく、実際に主たる事務所を移した日を確認します。
会議室を借りたり、一時的な作業場所を増やしたりするだけで、必ず主たる事務所の移転になるわけではありません。法人の主たる事務所をどこに置くのか、活動の実態と内部の決定をそろえて考えます。
定款の変更が必要になる場合
最初に確認するのは、現在の定款です。たとえば「主たる事務所を大阪市に置く」と定めている場合、大阪市内での移転なら、この条文を変更せずに済みます。一方、大阪市から別の市へ移す場合には定款変更が必要です。
定款に番地や建物名まで書いている法人では、その記載が変わる移転について定款を変更します。登記簿に書いてある住所だけを見て判断せず、定款の条文と移転先を照らし合わせてください。
定款変更には、社員総会の特別決議が必要です(一般法人法146条、49条2項4号)。一般社団法人の特別決議は、原則として総社員の半数以上で、総社員の議決権の3分の2以上に当たる多数を要します。株式会社の「出席者の議決権を基準にする決議」と混同せず、定款に加重要件がないかも確認します。
定款を変更する場合でも、設立時のように公証人の認証を受け直す必要はありません。
具体的な住所と移転日は誰が決めるのか
定款変更と、移転先の具体的な住所・移転日の決定は、分けて確認します。定款に市までしか書いていない場合も、登記には町名・番地等を含む具体的な所在場所が必要です。
理事会を置く一般社団法人では、主たる事務所の移転は原則として理事会で決議します。理事会を置かない法人では、定款や社員総会の決議を確認し、原則として理事の過半数で業務執行を決定します(一般法人法76条、90条)。
定款変更が必要なら社員総会の決議を整えたうえで、法人の機関設計に従って具体的な移転内容を決めます。定款変更の効力発生日と実際の移転日が食い違わないよう、移転の予定から逆算して準備します。
管轄内と管轄外では何が違うのか
「同じ市か、別の市か」という定款の問題と、「法務局の管轄が変わるか」という登記の問題は別です。別の市への移転でも、同じ登記所の管轄内となる場合があります。移転前後の所在地について、商業・法人登記の管轄を確認します。
| 移転の区分 | 登記申請の扱い | 登録免許税 |
|---|---|---|
| 同じ登記所の管轄内 | 移転の変更登記を申請 | 3万円 |
| 別の登記所の管轄へ | 旧所在地・新所在地の申請を同時に行う | 合計6万円(各3万円) |
上の税額は、公益認定を受けていない一般社団法人の主たる事務所移転だけを申請する場合です。定款変更のための公証人認証費用はかかりませんが、司法書士へ依頼する場合の報酬などは別にかかります。
管轄外へ移す場合は、新所在地分の申請も、旧所在地の登記所を経由して行います。新旧の法務局へ別々に書類を送るわけではありません。オンライン申請でも、この経由申請の考え方は同じです(一般法人法330条により準用する商業登記法51条)。
移転登記に必要になる書類
主な書類は次のとおりです。実際の決定方法によって、必要な議事録や決定書が変わります。
- 社員総会議事録(定款変更を行った場合など)
- 理事会議事録、理事の決定書等(具体的な所在場所・移転日の決定を証する書面)
- 定款(決定方法などを証明するために必要な場合)
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
管轄外移転では、新旧の所在地について申請書を準備します。2025年4月21日以降、登記所に提出している印鑑の記録は新所在地へ移送されるため、同じ印鑑を使う通常の管轄外移転では、新所在地への印鑑届は不要です。一方、印鑑カードは引き継がれないので、必要な場合は移転登記が完了した後、新所在地の登記所で改めて交付を請求します。
移転後は、税務署等への届出、銀行や取引先への住所変更、ウェブサイトの案内なども整えます。登記を申請しただけで、すべての届出や契約上の連絡が自動的に済むわけではありません。
よくある質問
司法書士からひと言
移転の準備では、まず定款の所在地の条文と、法務局の管轄を確認すると、必要な手続きが見えてきます。引越しの日程だけでなく、社員総会や理事会、登記後の銀行手続きまで一緒に予定を組んでおくと進めやすくなります。新しい活動拠点での運営に集中できるよう、書類の準備は早めに整えておきましょう。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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