一般社団法人を非営利型で設立したいとき、理事を3名そろえるだけでよいのでしょうか? 親族等の割合要件から税法上の理事は少なくとも3名必要ですが、定款の定めや実際の運営も要件を満たす必要があります。設立登記ができることと、税法上の非営利型に該当することは別の問題です。本ブログでは、非営利型の一般社団法人を設立・運営するときの注意点について、わかりやすく説明します。
非営利型の一般社団法人とは
非営利型法人とは、一般社団法人・一般財団法人のうち、法人税法上の一定の要件を満たす法人です(法人税法2条9号の2、法人税法施行令3条)。ここでは、公益認定を受けていない一般社団法人を取り上げます。
「一般社団法人」は法人の種類、「非営利型」は税法上の区分です。名前に「非営利」と付けたり、定款にそう書いたりするだけで決まるものではありません。非営利型に該当すると、法人税は収益事業から生じた所得が課税対象になります。該当しなければ、普通法人として全ての所得が課税対象になります。具体的には、寄付などから生じた所得は、法人の課税対象から外れることになります。
税法上の要件を別に確認
非営利型には公益認定のような認定手続きはなく、要件を満たすかどうかで判定されます。ただし、収益事業の開始や法人区分の変更などに応じた税務届出は別に必要です(国税庁の説明)。
非営利性が徹底された法人を目指す場合は、残余財産の帰属先を法令の範囲内に定める必要があります。次はその定款の例です。共益的活動を目的とする法人の要件とは区別して確認します。
(残余財産の帰属)
第○○条 この法人が清算をする場合において有する残余財産は、社員総会の決議を経て、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第5条第20号イからトまでに掲げる法人又は国若しくは地方公共団体に贈与するものとする。
理事3名以上が必要になる理由
両類型に共通するのが、各理事について「その理事本人+配偶者・3親等以内の親族、その他の当該理事と財務省令で定める特殊の関係のある者である理事」の人数を、理事総数の3分の1以下にする要件です(法人税法施行令3条1項4号・2項7号)。
親族がいなくても、本人を1名と数えます。 理事が1名なら1分の1、2名なら2分の1となるため、3分の1以下にはなりません。理事が3名いて、相互に特殊の関係がなければ、それぞれ3分の1となり、この割合要件を満たせます。
税法上の理事には、登記上の理事以外でも、職制上の使用人だけの立場ではなく、実際に経営に従事する人を含む場合があります(法人税法施行令3条3項)。以下の人数例は、この「みなし理事」がいない場合です。
夫婦を理事にすることが一律に禁止されているわけではありません。ただし、夫婦と知人1名の計3名なら、夫婦それぞれについて3分の2となり、要件を満たしません。夫婦2名を含む場合、他の関係も問題がなければ理事総数は少なくとも6名必要です。
特殊の関係は、戸籍上の親族だけではありません。事実婚の相手、その理事個人の使用人、その理事の金銭等で生計を維持する人なども含まれます(法人税法施行規則2条の2第3号~第5号)。これらの人と生計を一にする配偶者・3親等以内の親族が含まれる場合もあります。肩書や姓だけで判断せず、全ての理事を起点に確認します。
社員・理事・監事の人数を混同しない
| 確認すること | 一般社団法人の基本 | 非営利型を目指す場合 |
|---|---|---|
| 設立時の社員 | 2名以上 | 同じ。理事の人数とは別に確認 |
| 理事 | 理事会を置かない場合は1名以上 | 税法上の理事について割合要件を満たす構成(最少3名) |
| 理事会 | 設置は任意 | 非営利型だから必須になるものではない |
| 監事 | 理事会・会計監査人を置く場合は必要 | 監事という肩書だけで理事数へ加えない |
社員は、従業員ではなく法人の構成員です。社員と理事の兼任は可能ですが、「社員2名と理事1名がいるから合計3名」と肩書の人数を足すことはできません。税法上のみなし理事は、実際の役割から別に判断します。
理事3名でも、理事会を置かない設計は可能です。理事会を置くなら理事3名以上と監事が必要で、理事と監事は兼任できません。会計監査人の設置義務など、規模による要件も別に確認します(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律10条・60〜65条)。
非営利型の2つの類型を確認する
非営利型には「非営利性が徹底された法人」と「共益的活動を目的とする法人」があります。どちらか一方の要件を全て満たす必要があり、両方から都合のよい条件だけを選ぶことはできません。
| 確認項目 | 非営利性が徹底された法人 | 共益的活動を目的とする法人 |
|---|---|---|
| 活動・会費 | 共益型と同じ会費要件はない | 会員共通の利益を図る活動が主目的。定款等に会費の額、又は額を社員総会の決議で定める旨が必要 |
| 主たる事業 | 共益型と同じ収益事業の制限はない | 主たる事業として収益事業を行っていないこと |
| 剰余金 | 分配しないことを定款に明記 | 特定の個人・団体への分配を定款に定めない |
| 解散後の残余財産 | 国・地方公共団体や法令所定の公益的な法人等に帰属する旨を定款に明記 | 特定の個人・団体への帰属を定款に定めない(法令所定の帰属先を除く) |
| 運営・過去の行為 | 剰余金・残余財産の定款違反となる行為を決定・実行していないこと。一定期間の特別の利益供与も含む | 他の要件の全てに該当していた期間に、特別の利益を与えることを決定・実行していないこと |
| 理事の構成 | 各理事本人と、特殊の関係がある理事の合計が理事総数の3分の1以下 | 同左 |
表は法人税法施行令3条1項・2項の要件を整理したものです。徹底型の「一定期間」は、同項1号・2号・4号の要件に該当していた期間を指します。清算中に初めて全要件を満たす法人は対象から除かれます。
たとえば徹底型では、残余財産の帰属先を定めていない定款や、「社員総会の決議で定める」とだけ書いた定款では足りません。共益型の書き方と混同せず、帰属先が法令の範囲に収まるかまで確認します(法人税法施行令3条)。
定款を整えた後にもある落とし穴
| よくある思い込み | 確認したいこと |
|---|---|
| 報酬を払うと非営利型でなくなる | 報酬の支払い自体は禁止ではない。過大な報酬等の特別の利益が問題になる |
| 公益的な活動だから法人税はかからない | 税法上の収益事業かを事業内容から判定する。非営利型と公益認定は別 |
| 会費という名前なら課税対象外 | 実質がサービス等の対価であれば、名称だけでは判断できない |
| 定款のひな形を使えばずっと安心 | 役員交代、親族関係の変化、事業変更などの際にも判定が必要 |
「特別の利益」には、社会通念上不相当な高額報酬や、特定の人から通常より高い賃料で物件を借りることなどが含まれます。これが「特別の利益」の考え方です(法人税基本通達1-1-8)。実際に与えた場合だけでなく、与えることを決定した場合も要件に関係します(法人税法施行令3条)。
この行為に関する要件を欠いて普通法人になった場合には、再び同じ類型の非営利型法人には該当しないという取扱いがあります。「後で返金すれば元どおり」と考えず、事前に、税理士に確認することが必須でしょう。
設立後も、理事の変更前に割合を確認する
関係のない理事1名の退任で、理事総数が5名に減少
変更前に、後任の就任と税務上の扱いを相談
たとえば夫婦を含む理事6名で割合要件を満たしていた法人でも、関係のない理事が1名退任すると、夫婦について2/5となり、3分の1を超えます。期末だけでなく、原則として判定時の現況で確認する点に注意してください。
理事の退任により要件を欠いた場合、相当の期間内に構成を整えれば継続して満たすと扱える可能性もあります。ただし、一律の猶予期間が保証されるものではありません。欠員への対応については、登記と税務の両面から確認する必要があります。
非営利型への該当・非該当自体を登記する制度ではありませんが、理事などの登記事項が変われば変更登記が必要です。税務上の区分が変わると、事業年度の区切りや所得の調整にも影響するため、変更前に税理士と確認しておきます。
よくある質問
司法書士からひと言
設立の準備では、まず「誰が理事になるか」と「どの活動で運営するか」を具体的にすると、必要な定款の形が見えてきます。司法書士の定款・登記の確認と、税理士の税務上の確認を設立前からつなげておくことが大切です。設立後の役員交代まで見据えて、続けやすい法人の形を整えていきましょう。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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