一般社団法人をたたむことになり、登記簿を確認したら理事の任期が何年も前に切れていた。こうしたとき、まず理事を選び直して登記をしてからでないと、解散の登記はできないのでしょうか? 理事全員が任期満了後も権利義務理事として在任している一般社団法人は、先に理事を選び直さずに社員総会の特別決議で解散し、解散と清算人の登記を申請できます。ただし、任期切れを放置していたことへの過料(行政上の制裁金)の話は、解散の登記が通ることとは別に残ります。本ブログでは、理事が任期切れになっている一般社団法人の解散登記について、わかりやすく説明します。
権利義務理事とは
権利義務理事とは、任期の満了や辞任で退任したあとも、後任が就任するまで理事としての権利と義務を持ち続ける人のことです(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律〔以下「一般法人法」〕75条1項)。理事が誰もいなくなる場合や、法律や定款で決めた人数を下回る場合に、この状態になります。
一般社団法人の理事の任期は、原則として、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までです。定款または社員総会の決議で短縮できますが、株式会社の一定の場合のように10年まで延ばすことはできません(一般法人法66条)。任期満了日は、選任日と事業年度、定款や選任時の決議を確認して判断します。改選の間隔が短いため、小規模な法人ほど改選を忘れやすい仕組みだといえます。
定時社員総会を開いていない場合は、任期満了日をどの日とするかも確認が必要です。わたくしが扱った事例では、定款所定の開催時期(たとえば「事業年度の終了後3か月以内」)の末日を任期満了日として整理し、その後は理事全員が権利義務理事として在任していることを議事録に記載して、解散と清算人の登記を申請しました。総会を開かなければ任期が延びる、ということにはなりません。
なお、本ブログでは、理事会も監事もなく、任期満了後に理事の改選をしていない一般社団法人を扱います。
任期切れのまま解散の決議ができる理由
理由は2つあります。ひとつ目は、権利義務理事が理事としての権利と義務を引き続き有するため、社員総会を招集できることです(一般法人法75条1項・36条3項)。所定の招集手続きを経て、解散に必要な特別決議の要件を満たせば、理事が任期満了後の権利義務理事であることだけを理由に、その決議が無効になることはありません。
ふたつ目は、解散を決めるのは理事ではなく社員だということです。解散には、原則として総社員の半数以上に当たる社員の賛成と、総社員の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。定款でこれを上回る割合を定めている場合は、その要件に従います(同法148条3号・49条2項6号)。理事の任期が切れているかどうかは、この決議の要件に入っていません。
理事の退任の登記を申請しなくてよい理由
決議が有効だとしても、登記簿に残っている理事の登記はどうなるのでしょうか。解散の登記をすると、登記官が職権で、理事と代表理事の登記に抹消の記号(下線)を記録します(一般社団法人等登記規則3条が準用する商業登記規則72条1項)。理事の登記は解散の登記と一緒に消えるため、理事の退任の登記を別に申請する必要はありません。
わたくしが担当した案件で完了後の登記事項証明書を確認したところ、理事の欄には退任の日付も重任の記録も入らないまま下線が引かれ、その下に清算人と代表清算人、そして解散の旨が記録されていました。なお、監事を置いている法人では、監事の登記は解散しても抹消されずに残ります。
先に理事を選び直す方法との比較
「念のため理事を選び直して、登記簿をきれいにしてから解散する」という進め方も考えられます。2つの進め方を比べると、次のようになります。
| 理事を選び直してから解散 | 任期切れのまま解散 | |
|---|---|---|
| 申請する登記 | 理事の退任と就任、解散、清算人 | 解散、清算人 |
| 登録免許税 | 4万9,000円 | 3万9,000円 |
| 選び直した理事の行方 | 解散と同時に退任する | ― |
| 過去の任期切れに対する過料の可能性 | 残る | 残る |
左の列の税額は、役員変更の登記を別に申請してから解散する場合です。登録免許税は、役員変更が1万円、解散が3万円、清算人が9,000円です(登録免許税法別表第一24号(1)カ・レ、(3)イ)。理事を選び直しても、その理事は解散の時に地位を失い、清算人と入れ替わります。任期が切れてから何年も空いているため、登記の内容も「重任」ではなく「退任」と「就任」になり、登記簿を見れば空白の期間があったことはわかります。
つまり、選び直しても過去の任期切れが無かったことにはなりません。解散することが決まっているのであれば、任期切れのまま進めるほうが手続きとして素直だと考えています。
社員総会議事録の書き方と清算人の選び方
わたくしが扱った事例では、議案に入る前に、定時社員総会を開催していなかったことと、理事全員がいつから権利義務理事として在任しているかを確認事項として記載しました。出席した理事の肩書も、登記簿のとおり「代表理事」「理事」と書いています。これは経緯を明らかにするために加えた記載で、任期切れの法人すべてに共通する必須の記載事項という意味ではありません。
この記載があると、申請を受けた登記官にも、任期切れを把握したうえで権利義務理事が招集した総会であることが伝わります。この申請は補正(法務局からの修正の指示)なく完了しましたが、任期満了日の整理や添付書類に疑問がある場合は、定款と議事録案を示して管轄法務局に事前照会する方法があります。
清算人は、解散を決議する同じ社員総会で選任しておくことをおすすめします。定款にも決議にも定めがなければ理事が清算人になりますが(一般法人法209条1項1号)、任期切れの理事がこの「理事」にあたるのかという論点を残すことになります。社員総会の決議によって選任すれば、一般法人法209条1項3号に基づく清算人であることが明確になります。
過料はどうなるのか
解散の登記が通ったからといって、過料の可能性まで消えるわけではありません。役員が欠けた場合などに必要な選任手続きを怠ったとき(一般法人法342条13号)や、正当な理由なく定時社員総会の招集を怠ったとき(同条9号)は、その義務を負う理事などが100万円以下の過料の対象となり得ます。解散しても、それ以前の義務違反がなかったことになるわけではありません。
解散の登記を申請すれば任期切れの事実は登記官の目に入り、登記官から地方裁判所への通知を経て、理事などの個人に裁判所から書類が届く場合があります。過料の通知が届いたあとの流れは、会社の過料について書いた記事で説明しています。
過料が気になって解散の手続きを止めてしまうと、放置の期間だけが延びていきます。最後の登記から5年が過ぎれば、みなし解散の対象にもなります(一般法人法149条1項)。まず、改選そのものをしていないのか、改選はしたものの登記をしていないのかを確認します。前者では選任懈怠、後者では登記懈怠が問題となり、定時社員総会を招集していなければ、その点も別に検討します。過去の経緯を整理したうえで、解散決議と登記の日程を決めます。
必要になる書類
主な書類は次のとおりです。通常の解散と清算人の登記と変わりません。清算人を複数選任して代表清算人を定める場合などには、その選定方法に応じた書面も必要になります。
- 社員総会議事録(解散の決議と清算人の選任を記載したもの)
- 定款(清算人の登記の申請には定款の添付が必要です。一般法人法326条1項)
- 清算人の就任承諾書(議事録に席上で就任を承諾した旨の記載があれば、議事録の記載を援用できます)
- 代表清算人の印鑑届書(書面で印鑑を届け出る場合)
- 清算人の個人実印の印鑑証明書
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
解散の登記は解散の日から2週間以内、社員総会で選任した清算人の登記は就任の日から2週間以内に申請します(一般法人法308条1項・310条2項)。
よくある質問
司法書士からひと言
「登記簿が古いままだから、まずそこを直さないと解散できない」と考えて、手続きが止まってしまう法人は少なくありません。わたくしが扱った事例では、理事を選び直さず、解散と清算人の登記を申請して補正なく完了しました。完了後の登記事項証明書でも、理事・代表理事の登記が退任や重任の記録を挟まずに抹消されていることを確認できました。ただ、この結果だけで、過去の選任懈怠などの問題まで解消したとはいえません。ご相談では、解散に必要な手続きと、過去の義務違反による過料の可能性を分けてご説明します。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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