株主総会を開くことになったとき、招集通知はいつまでに、どのような方法で送ればよいのでしょうか。招集通知の発送期限は、公開会社なら株主総会の日の2週間前まで、非公開会社なら原則として1週間前までです(会社法299条1項)。ただし、書面投票・電子投票を採用するかどうかや定款の定めによって期限は変わり、株主全員が提案に同意できる会社なら、総会を開かずに「書面決議」で済ませるのが実務では一般的です。本ブログでは、招集通知の発送期限・通知方法・記載事項・添付書類、準備の進め方と、招集通知を出さずに済ませる方法について、わかりやすく説明します。
目次
招集通知とは
招集通知とは、株主総会の日時・場所・議題などを株主に知らせる通知です(会社法299条)。株主が総会に向けて議題を検討し、出席するかどうかや議決権をどう行使するかを考える時間を確保する意味があります。
株主が株主総会を招集する場合を除き、取締役は、株主総会を招集するときに、日時・場所や、株主総会の目的である事項(議題)などを定めます(会社法298条1項)。取締役会設置会社では、この決定は取締役会の決議で行います(同条4項)。書面または電磁的方法による招集通知には、ここで定めた事項を記載・記録しなければなりません(会社法299条4項)。
招集通知の発送時期
招集通知の発送期限は、会社の機関設計などによって次のとおり異なります(会社法299条1項)。
| 招集通知の発送時期 |
| 公開会社(株式の一部でも譲渡制限がない会社) | 株主総会の2週間前までに発送 |
| 非公開会社(取締役会あり・書面等投票なし) | 株主総会の1週間前までに発送 |
| 非公開会社(取締役会なし・書面等投票なし) | 原則1週間前。定款でさらに短い期間を定めることができます |
| 書面投票・電子投票を採用する会社 | 2週間前までに発送(非公開会社でも同じ) |
会社法は、期限までに通知を「発しなければならない」と定めているため、基準になるのは株主に届いた日ではなく、発送した日です。また、「2週間前まで」は、発送した日と総会の日の間に丸2週間をあける数え方をします。たとえば6月27日に総会を開く公開会社なら、6月12日までに発送します。土日祝日は除外するなどのルールもなく、平日と同様にカウントします。
株主総会資料の電子提供制度を定款で採用している会社は、招集通知とは別に、電子提供措置を総会の日の3週間前の日か招集通知を発した日のいずれか早い日から始める必要があります(会社法325条の3第1項)。
招集通知の方法
招集通知の方法は、次のとおりです。取締役会設置会社と、書面投票・電子投票を採用する会社は、書面で通知しなければなりません(会社法299条2項)。株主の承諾があれば、書面に代えてメールなどの電磁的方法で通知することもできます(同条3項)。
| 招集通知の方法 |
| 公開会社 | 書面、または株主の承諾を得た電磁的方法 |
| 非公開会社(取締役会を設置している会社) | 書面、または株主の承諾を得た電磁的方法 |
| 取締役会を設置していない会社 | 書面・電子投票を採用しない場合は口頭でも可能。ただし、通知した内容と日時が分かる記録を残しておきます |
スタートアップでは、株主の承諾も招集通知の送付も、スマートラウンドなどの株主管理のサービス(SaaS)上で行うことが多くあります。投資家が増えても、サービス上で電磁的方法による通知への承諾を取り付けておけば、招集通知や計算書類を一括で届けられ、送付の記録も残ります。
承諾は、あらかじめ株主に電磁的方法の種類と内容を示したうえで、書面または電磁的方法で得ます(会社法施行令2条1項2号、会社法施行規則230条)。株主があとから電磁的方法での通知を受けない旨を申し出たときは、その株主には書面で通知します(会社法施行令2条2項)。サービスを使わずに承諾を書面で取り付けるときは、次の書式をお使いください。
招集通知の記載事項
招集通知には、取締役(取締役会)が招集の際に決めた次の事項を記載します(会社法298条1項、299条4項)。
- 株主総会の日時および場所
- 株主総会の目的事項(議題)
- 書面投票・電子投票を認める場合はその旨
- その他法務省令で定める事項
「法務省令で定める事項」は会社法施行規則63条に列挙されています。たとえば、開催場所が過去に開催したどの場所からも著しく離れているときの、その場所に決めた理由や、役員選任などが議題になるときの議案の概要がこれにあたります。
招集通知の添付書類
会社の形態や投票方法によって、招集通知と一緒に次の書類を株主に提供します(会社法301条、302条、437条)。
- 計算書類および事業報告(取締役会設置会社の定時株主総会の場合。監査報告等を含む)
- 株主総会参考書類(書面投票・電子投票を定めた場合)
- 議決権行使書面(書面投票を定めた場合)
招集通知を出さずに済ませる方法(書面決議と招集手続の省略)
株主が1人の会社や、株主が家族・少数の役員だけの会社では、株主総会を実際に開かず、株主全員が書面や電磁的記録(クラウドサインなどの電子契約を含みます)で提案に同意する「書面決議」で済ませるのが、実務では一般的です(会社法319条1項)。全員の同意がそろえば、その提案を可決する株主総会の決議があったものとみなされ、招集通知は要りません。決議があったものとみなされた内容は、議事録にまとめます。
このほか、株主全員の同意があれば、招集手続を省略して総会を開くこともできます(会社法300条。書面投票・電子投票を採用する場合を除きます)。ただ、この方法では実際に総会を開いて決議をする必要があるため、書面決議で足りる場面であえて選ぶことは、実務上あまり多くありません。
招集通知の準備で確認すること
まず定款と株主名簿を確認し、招集を決定する機関、議題、日時・場所、通知方法を整理します。そのうえで、発送期限から逆算して取締役会などの日程を決め、通知と必要資料をそろえます。
定時株主総会で議決権を行使できる株主を基準日で決めている会社は、基準日から3か月以内に総会を開く必要があります(会社法124条2項)。総会の日程を組むときは、発送期限とあわせて、この期限にも収まっているかを見ておきます。
よくある質問
招集通知に記載する「議案」と似たものとして「議題」というものがあると聞きました。それぞれについてわかりやすく説明してください。
議題は「取締役選任の件」のような会議のテーマで、それ自体に賛否の意思は入っていません。これに対し、議案は「○○を取締役に選任する」という意思の入った具体的な提案(決議案)です。
「計算書類承認の件」であっても、定時株主総会招集通知に添付されているのは、会社提案の貸借対照表「案」、損益計算書「案」などに過ぎず、総会の承認があって初めて「案」が取れて、確定した貸借対照表、損益計算書になります。したがって、「第○号議題」としてもよいのですが、慣例で会社提案の議案を表に出して、「第○号議案」とするのが一般的だということになっています。
株主総会の「召集」通知と書いて発送しようとしたところ、チェックしていただいた弁護士の先生から「招集」通知に直すように指示をうけました。なぜ、前者の表記ではダメなのですか?
株式会社の株主総会については、会社法が「招集」という用語を使っているためです(会社法296条・298条・299条)。「召集」は、憲法7条で国会について使われている表記で、株主総会とは法令上の用語が異なります。
大阪の会社ですが、株主総会を北海道で開催することはできますか?
開催できます。会社法には株主総会の開催場所を制限する規定はありません。ただし、株主が出席しにくい場所をあえて選ぶと、招集手続が著しく不公正だとして決議の取消しを求められるおそれもあるため、株主の出席のしやすさには配慮します。
また、開催場所が過去に開催したいずれの場所とも著しく離れた場所であるときは、その場所に決めた理由を招集の際に定め、招集通知に記載する必要があります。その場所が定款で定めた場所である場合や、総会に出席しない株主全員が同意している場合は不要です(会社法298条1項5号、会社法施行規則63条2号)。
株主総会の招集通知では、「委任状用紙に議案に対する賛否をご表示ください。」と表記しますが、単に、委任状ではいけないのでしょうか?
株主が記入して代理人に委任したときに、はじめて「委任状」になります。それまでは委任状になる前の用紙にすぎないため、「委任状用紙」と表記するのが慣例です。
株主が委任状用紙へ押す印鑑は、どのような印鑑でもよいのですか?
会社が送付した委任状用紙を使っている場合は、株主本人からの委任と推定できるため、印鑑の種類にはこだわらないのが実務上の扱いです。
なお、議決権行使書面の場合は、押印欄が設けられていません。(会社法施行規則第66条第1項第5号)
当社の定款には、「株主又はその法定代理人は、当会社の議決権を有する株主、または親族1名を代理人として、議決権を行使することができる。ただし、この場合には、株主総会ごとに代理権を証する書面を提出しなければならない」と定められていますが、株主である当社の従業員が代理人として参加する場合でも、代理権を証する委任状は必要ですか?
必要です。代理人になれるかという問題と、代理権を証明する書面が必要かという問題は別です。代理人が株主であっても、代理人として議決権を行使する以上、総会ごとに委任状などの代理権を証明する書面を提出します(会社法310条1項・2項)。
株主以外の人を代理人にしたい場合は、まず定款上の代理人資格にあたるかを確認し、そのうえで代理権を証明する方法をそろえてください。
株主総会の招集通知発送後に、株主総会の開催場所を変更することは可能でしょうか?
招集通知に記載した開催場所は変更できないのが原則です。ただし、会場のホテルで全面的な停電が起き、ホテル側が近くの別のホテルの会議室を手配したなど、やむを得ない事情がある場合には、開催場所の変更が認められる余地があります。
この場合でも、株主への個別の連絡や、当初の会場から変更後の会場までの案内板・誘導係の配置など、株主が迷わず出席できるようにする対応が必要です。
(商業登記実務からみた中小企業の株主総会・取締役会 27頁)
日時と議題が同一であれば、場所が緊急に変更されても、その対応を正しく行えば、株主総会の同一性を失うことはないといえる。*「議題と場所が同一であっても日時が異なる」と同一性は失われる。
株主総会の招集通知発送後に、総会の開催日を変更することは可能でしょうか?
可能です。ただし、開催日の変更は、いったん行った招集の撤回と新たな招集手続にあたるため、変更後の日程であらためて招集の手続をとる必要があります。
当初の日程で来場する株主がいないよう、変更は速やかに知らせます。新しい招集通知は、公開会社かどうか、書面・電子投票の有無などに応じた会社法299条1項の期限を、あらためて確保して発送します。
たとえ議題と場所が同一であっても、日時が異なると株主総会の同一性は失われる(商業登記実務からみた~~27頁)。
株主には株主総会に参加する義務があるのですか?
株主が持つのは株主総会に出席する権利であり、出席義務はありません。ただし、欠席すればその場で質問や議決権行使をする機会は失われます。一方、招集手続や決議方法に法令・定款違反などがあれば、欠席した株主でも、会社法831条等に基づいて決議の効力を争える場合があります。
わたしの会社は、一人会社なので株主はわたし一人で全ての株式を保有しています。そのような場合でもこのような手続きが必要になるのでしょうか。
株主がご自身1人なら、招集通知を出す必要はありません。実務では、総会を開かずに、株主であるご自身が提案に同意する書面決議(会社法319条1項)で済ませるのが一般的です。決議があったものとみなされた内容は、議事録にまとめます。
なお、一人会社では、その株主が出席すれば、招集手続がなくても株主総会は有効に成立するとした判例もあります(最判昭和46年6月24日民集25巻4号596頁)。株主が複数いる会社で、招集手続をとらずに株主全員が開催に同意して出席した場合も、有効な総会とされています(最判昭和60年12月20日民集39巻8号1869頁)。これを通称「全員出席総会」といいます。
当社の株主は大阪と東京にわかれているため、大阪会場と東京会場の2つの会場をわけて、2つの会場をテレビ会議でつなげて総会を開催しようと思っています。そのような方法での総会の開催は可能でしょうか?
はい、可能です。2か所以上の場所で開催する場合でも、株主総会は1つの会議体ですので、会場どうしで情報のやりとりが即時にでき、会議体としての一体性が確保されていれば、そのような方法で開催することも認められています。
各会場で発言や議決権行使ができるようにし、音声・映像の送受信や通信障害時の対応を事前に確認しておきます。
当社は合同会社です。合同会社の場合でも、本ブログで書いてあるような招集手続が必要になるのでしょうか?
いいえ、不要です。合同会社には株主総会がなく、株主総会の招集通知のような手続も法律上定められていません。定款に別段の定めを置かない限り、合同会社で招集通知を発送する必要はありません。
株主総会の招集通知発送後に、総会の開催時間を変更することは可能でしょうか?
可能です。ただし、開始時刻の変更も株主の出席や議決権行使に影響するため、招集の決定と通知のやり直しが必要かを確認し、変更前の時刻を信じて来場する株主が不利益を受けないよう、事前に十分な連絡を行います。
定時株主総会は、決算を締めた日からどのぐらいのタイミングで開催すればよいのでしょうか?
定時株主総会は、毎事業年度の終了後、一定の時期に招集します(会社法296条1項)。事業年度の末日を議決権の基準日にしている会社では、基準日から3か月以内に開く必要があります(会社法124条2項)。多くの会社の定款が「毎事業年度終了後3か月以内」と定めているのは、このためです。
計算書類は原則として総会の承認を受けますが、会社法439条の要件を満たす場合は報告で足ります。税務申告の期限との関係は、顧問税理士にご確認ください。自社の定款、決算作業、監査、招集通知の発送期間を並べて、無理のない日程を組むことが大切です。
司法書士からひと言
招集通知は、あとから決議の効力を争われないための土台になる手続きです。特に、定款で招集期間を短縮しているか、書面投票を採用しているかで発送期限が変わるため、毎年同じ日程で動いている会社でも、定款の定めを一度確認しておくと安心です。
株主総会で役員の選任や定款変更を決めると、その内容の登記が必要になることもあります。総会の日程を組む段階からご相談いただければ、議事録や登記の準備まで見通して進められます。会社の設立・変更登記や、継続的な登記・会社運営のご相談は、スタートアップ支援・顧問サービスをご覧ください。
司法書士 石本憲史(大阪司法書士会所属 登録番号 大阪第4973号)
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